伝説再現だ! WBO世界スーパーフライ級王者井上尚弥(22=大橋)が今日29日、同級1位ワルリト・パレナスとの初防衛戦で1年ぶりのリングに立つ。28日には都内のホテルで前日計量に臨み、リミットの52・1キロでパス。世界を驚かせた名王者ナルバエス戦から丸1年。再び存在をアピールするため、豪快なKO決着も宣言した。

 計量をクリアした井上は、小さくうなずきながら両拳を握った。父真吾トレーナー特製の五穀米入りの参鶏湯(サムゲタン)でエネルギーを補給すると「ばっちりです」と一言。右拳の負傷による1年ぶりのリングに「待ちくたびれて、うずうずしている。苦しかった思いをすべてぶつけたい」。試合への飢えを、力強い言葉で表現した。

 ブランクも何の、消極的な試合をするつもりはない。昨年末、名王者ナルバエスを衝撃的なKOで下し、世界を驚かせた。井上が「理想的」と語る攻撃的な試合内容は、今回も追い求める形になる。パレナス戦について、父の真吾トレーナーは「ナルバエスの時と同じで、ポイントは序盤に強いパンチを当てること。それで自分の距離を作れれば、カウンターのチャンスも増える」と説明した。

 右が使えない半年間も片手でスパーリングを続けるなど、徹底的に左を強化してきた。ナルバエスを最後に沈めた、腹にめり込むような左ボディーもさらに威力を増した。報道陣に囲まれた王者は「衝撃を与えるような勝ち方をしたい。豪快なKOで『井上が帰ってきたぞ』というところを見せつけたい」と言葉に力を込めた。

 年末に世界戦が行われるのは日本のみとあり、復帰戦には世界中から熱い視線が注がれる。この日までに来日したWBOのフランシスコ・バルカルセル会長(67)も「ナルバエスが私に『あんな固いパンチを受けたのは初めて』と言ってきた。それを自分の目で見たいと思って日本に来た」と高い期待を口にした。舞台は整った。井上が、苦しんだ15年を自らの拳で振り払う。【奥山将志】

 パレナスのコメント (リミットを400グラム下回る51・7キロで計量をパスし)最高のコンディションに仕上がった。世界戦の雰囲気にも興奮している。練習してきた成果を見せる。

 ◆井上-ナルバエス戦 井上が11度防衛中の王者ナルバエスに挑戦。開始直後に、左こめかみ付近に右を連発しダウンを奪うと、続けざまに左フックで2度目。2回にはカウンターの左フックで3度目を奪い、最後は左ボディーで2回3分1秒KO勝ち。井上は右拳を負傷し長期離脱した。