WBA世界フライ級王者井岡一翔(27=井岡)が、3戦連続のKOで4度目防衛に成功した。暫定王者スタンプ・キャットニワット(18)を7回2分51秒TKOで撃破し、王座を統一。婚約中の歌手谷村奈南(29)を心の支えにして、国内歴代2位の世界戦13勝目を挙げた。効率良く力を出す極秘トレーニングを4年続けた成果を見せ、WBO王者鄒市明(ゾウ・シミン、35=中国)ら他団体王者との統一戦へ、弾みをつけた。井岡の戦績は22戦21勝(13KO)1敗。

 真の王者はやはり井岡だった。2回にスタンプの右フックを浴び、世界戦初のダウンを奪われたが、落ち着いて立て直す。上下へパンチを打ち分けスタミナを奪い、迎えた7回だ。左ボディーでダウンを奪い返した。何とか立ち上がった相手を連打から、左右のボディーでリングに沈めた。

 若き18歳の暫定王者をねじ伏せ、4度目の防衛に成功。「最初にダウンしてしまったので、やられたらやり返す、倍返ししようと思ってました」。6年連続の大みそか決戦。今回は地元大阪ではなく京都でボクシング界の大トリを務めた。

 3連続KOで、世界戦勝利数は歴代2位長谷川穂積と並ぶ13勝目になった。21歳で世界王者になった井岡も27歳。「極論、やるか、やられるか。生きるか、死ぬかなんですよ」。人生を懸けた戦いを積み重ね、円熟期に入ってきた。限界まで追い込むより、体の状態を整えることを重視する。

 「ガムシャラにやってきた若い時には気づかなかった。でも、ここから先に行くためにはケガしない体作りが大事」。小麦粉の摂取を控えるなど、食事面では婚約中の歌手谷村奈南から助言を受けて、万全に仕上げた。「最愛の人に感謝したい」と、声を張り上げた。この日は谷村が作った曲(未発表)で入場していた。

 故障知らずの井岡が、極秘で続けてきたことがある。プロ野球阪神の金本監督らが現役時代に通った大阪市内のジムで、4年前から体の関節を整えながらトレーニングをしてきた。不安定なゲタの上で片足でバランスを取り、体のゆがみを解消。力を効率良く発揮できる体作りをしてきた。栗田興司コンディショニングコーチ(50)は「今の井岡君は、瞬間的に発揮できる力の数値が過去最高」と証言する。それが、一瞬の反応で繰り出すパンチ力につながっている。

 具志堅用高の歴代1位世界戦14勝へ王手をかけ、17年に狙うのは他団体王者との統一戦だ。最大の標的は、WBO王者である鄒市明だ。「今の井岡一翔が一番強いと自分でも感じたいし、証明しないといけない」。古都京都で弾みをつけた井岡が、さらに大きな夢へと加速する。【木村有三】