<全日本:横浜大会>◇28日◇横浜文化体育館◇4500人

 3冠ヘビー級タイトルマッチは武藤敬司(45)の化身で挑戦者のグレート・ムタが、王者諏訪魔(31)を24分52秒、月面水爆からの体固めで破り5年7カ月ぶり2度目の王座に輝いた。代理人武藤と合わせた通算タイトル数は、故ジャイアント馬場さんの34個に並び日本最多タイに。加えて小島聡(38)以来2人目となるIWGP、3冠ヘビー級王座同時保持の快挙も達成した。

 4発目の緑の毒切りが諏訪魔の顔面を直撃した。王者が必殺のラストライドに入りかけた一瞬のスキを狙った起死回生の一撃。ムタはひるんだ諏訪魔をシャイニングウィザードでリングに倒すと、最後は華麗な月面水爆でとどめを刺した。タイトル数34は馬場さんと並ぶ日本最多タイ。それでもムタの代理人武藤は「記録より記憶だよ。亡くなってからも桑田佳祐とCMに登場する馬場さんにはかなわない」と謙遜(けんそん)した。

 だが、「記憶」ではムタも負けていない。89年、WCWにスカウトされ、ムタが初めて米国降臨。実働は約1年だったが、リック・フレアー、スティングとの激闘は、全米ファンの脳裏にインパクトを残した。19年経過した今でも全日本にはムタ参戦のオファーが届く。2月には南アフリカ、4月にはスペイン、8月には米ボストンでサイン会の依頼もあった。

 試合後は乱入した鈴木みのるのスリーパーに、この日5発目の赤い毒切りを噴射して失神。意識回復後「Suzuki、I

 kill

 him」と言い残しリングを後にした。生きる伝説レスラーの「記憶」と「記録」への挑戦はまだまだ続く。【塩谷正人】