WBC世界フェザー級3位粟生隆寛(24=帝拳)が、「ご指名試合」に勝ってスターの座にのし上がる。昨年10月の挑戦で敗れたWBC同級王者オスカー・ラリオス(32=メキシコ)と3月12日に再戦することが決まり、20日に発表された。本来、認められない直接リマッチは、WBCのホセ・スレイマン会長(77)の希望で実現。その期待に応えるため、粟生は前回とはひと味違う成長ボディーで進化を証明する。

 ツルの一声を受け、粟生が再び世界の舞台に立つ。前回の対戦からわずか5カ月、3月に決まった王者ラリオスとのリマッチ。「まさかこんなに早く決まるとは」と本音を漏らした。

 無理もない。多くの選手に王座挑戦の機会を与えるため、タイトルを争った両者は本来、すぐに再戦できないからだ。WBCスレイマン会長の強い意向が、特例措置に働いた。帝拳ジムの本田明彦会長によると、昨年10月のタイトル戦を観戦したスレイマン会長は、粟生の勝利を確信したという。ところが、結果は1-2の判定負け。きわどい判定と、粟生への期待で、同会長はルールを動かした。「粟生にはスター性がある。日本に必要な存在だ」。昨年11月、中国でのWBC総会に粟生、ラリオスを招待し、再戦を認めることを伝えた。

 せっかくのチャンスを、粟生は無駄にするつもりはない。前回のタイトル戦後、以前のマイペース調整が一変。練習にも一層、身が入るようになり、体もひと回り大きくなった。スーツ姿のこの日も「首回りがちょっときつくなった」と訴え、会見後は「早く練習したい」と話した。本田会長も「この3カ月でパワー、スタミナ、体力が伸びている」と目を細める。粟生は「僕はまだ伸びると思う。相手はよくて現状維持でしょう」。ベテラン王者に引導を渡すつもりだ。【森本隆】