<全日本:広島大会>◇99年8月25日

 三沢光晴(37)が史上初めて6冠王になった。小川良成(32)と組み、世界、アジア両タッグ王者の大森隆男(29)高山善広(32)組に挑戦。最後は秘技エメラルド・フロウジョンで大森を仕留め、シングル3冠と合わせて6冠となった。世界ジュニアヘビー級王者の小川は計4冠になり、三沢と小川で全日本の全タイトルを独占。三沢は試合後、アジアタッグの返上を決めた。

 ▽世界タッグ、アジアタッグ選手権試合60分1本

 

 ○三沢光晴、小川良成(挑戦者組){23分2秒

 体固め}

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ●大森隆男、高山善広(王者組)

 三沢はトドメに宝刀エメラルド・フロウジョンを抜いた。大森の首根っこを抱え、頭から垂直にたたきつけた。さすがのタフガイ大森も、秘技を使われては立てない。史上3度目の大技で6冠が決まった。

 昨年1月の秋山戦、今年6月の小橋戦の2度しか出したことがない技を出した三沢は「ギリギリの勝負だった。あれ以上粘られたら、という気だったから」と振り返った。180センチ、90キロの小川が平均192センチ、117キロのノー・フィアーにほんろうされ始めた。このままでは体力負けする。チャンスとみた三沢は20分すぎ、オノ爆弾を空振りした大森に的を絞った。ヒジ鉄砲からタイガードライバー、ダイビング・ボディープレス、エメラルド・フロウジョンを一気にたたみかけた。

 ドンペリで乾杯した控室で、三沢は右脇腹を押さえながら「うーっ」と痛がった。強烈なヒザ蹴り、キックを浴びたため「ヒビが入ったかも……」。骨折の疑いも出てきた。「彼らは1発1発が重くなっている」。相手の実力は認めた。しかし、シリーズ前から「口先だけのヤツは嫌いだ」と敵意むき出し。アジアタッグのタイトルまでかけられ「実力で取ってみろ」と叫ばれた屈辱を晴らさないわけにはいかない。意地と実力で真っ向から制裁した。

 アジアタッグはほかのチームにチャンスを与える意味で返上を決めたが、3冠、世界タッグに君臨する三沢は「骨折しようが何だろうが今年いっぱいは守る」と長期政権へ意欲。後進に防衛の難しさを体で教えていく。【織田健途】

 ◆三沢の6冠

 シングルの3冠王座はインターナショナル、PWF、UNのヘビー級王座が統一され、世界タッグはインターナショナル、PWFのタッグ王座が統一されている。これにアジアタッグを加えて計6冠。(99年8月26日付紙面から)