<Dynamite!!>◇12月31日◇さいたまスーパーアリーナ

 高谷裕之(33=高谷軍団)がDREAMフェザー級王者ビビアーノ・フェルナンデス(30=ブラジル)に3-0で判定勝利し、日本人2人目のDREAM王者となった。

 33年間の人生を、ベルトへの執念を両拳に込めた。最終ラウンド残り40秒。もはや、戦術もスタイルもない。王者をマットに押しつけ、覆いかぶさった高谷は「伝説のけんか師」そのままに、ひたすら両腕を振り下ろし続けた。「格闘技と出会って人生が大きく変わった。格闘技に恩を返したい」。試合巧者のフェルナンデス相手に優勢に戦い、終了のゴング。青木真也以来、日本人2人目のDREAMタイトルを手にした。

 09年10月のフェザー級GP決勝で敗れたリベンジを果たした。準決勝の所英男戦での激闘の疲れを引きずり、1-2の判定負け。悔しさを胸に押し殺し、昨年3月に行われたフェルナンデスの初防衛戦を研究した。「もともと柔術に優れているが、打撃も進化している」。王者の成長ぶりを感じ、闘志をよみがえらせた。栄養とカロリー計算を徹底した麻穂夫人の手料理を口に運ぶたびに、家族の支えが身に染みた。

 幼少時からけんかに明け暮れた。地域に後ろ指をさされ、父純一さん(61)はやむなく、千葉県から北海道へ移住。親子は勘当寸前まで追い込まれた。「丈夫に育ててくれた親に、ベルトを見せたい」。この日、リングサイドに駆けつけた父の前で、一昨年6月に誕生した長男琥珀(こはく)ちゃんを抱き上げた。大みそか興行10周年のラストを飾る晴れ舞台で、親孝行できた。

 高谷は「これからは、自分で格闘技界を引っ張っていきたい」と約2万6000人のファンを前に誓った。今年から新設されるバンタム級制覇も視野に、新王者が新たな夢へ駆けだす。【山下健二郎】