旧PRIDEヘビー級王者エメリヤーエンコ・ヒョードル(35=ロシア)が、日本のリングから復興への勇気と力を送る。13日、「元気ですか!!大晦日!!」(31日、さいたまスーパーアリーナ)のヘビー級ワンマッチで、08年北京五輪柔道100キロ超級金メダリストの総合格闘家・石井慧(24=アイダッシュ)との対戦が正式発表された。ヒョードルが参戦を決めた最大の理由は、日本復興への願い。引退危機からはい上がって石井と戦う姿を、人々へのメッセージにする考えだ。

 一時は消滅しかけた交渉で、参戦の決め手となったのは「日本のために恩返しがしたい」というヒョードルの思いだった。格闘技不況に加え、東日本大震災に見舞われた日本。ゼネラルプロデューサーを務めるIGFアントニオ猪木会長も交渉に乗り出すほど、今大会にかける主催者側の熱意に心を動かされた。この日、都内でのDREAMのカード発表会見に早速、コメントを寄せた。

 ヒョードル

 また日本に戻って試合ができて、大変うれしく思っています。五輪王者の石井選手と対戦するのは名誉なこと。日本にとって大変な年でしたが、人生はいいときも、そうでないときもある。未来を信じていれば、きっと神のご加護があるでしょう。

 ストライクフォースで3連敗し、現役引退の危機に直面した。背水の陣で臨んだ11月20日のジェフ・モンソン戦で約2年ぶりの勝利を挙げたが、石井戦の結果次第では再び進退問題に発展しかねない。DREAMの笹原圭一イベントプロデューサー(EP)は「引退が頭をかすめる中、立ち上がる姿を見てもらいたいという気持ちを持っている」という。ヒョードルは現在、オランダでアーネスト・ホーストの直接指導を受けており、27日ごろ来日予定。日程次第で復興チャリティー開催の可能性もある。

 DREAM側はヒョードル-石井戦をメーンカードにする方針で、今年の格闘技界を締めくくる31日午後11時30分ごろに登場予定。スカパー!、ニコニコ動画に加え、ロシア国営放送での生中継も決定した。格闘技ファンで知られるプーチン首相も視聴するという。東南アジアからも中継の打診がある。笹原EPは「TBSとも交渉中です」と地上波放送の最終交渉に臨む構え。国内外で注目を浴びる一戦となる。【山下健二郎】