雪組2番手スター望海風斗(のぞみ・ふうと)が、上演中の主演ミュージカル「ドン・ジュアン」大阪・シアター・ドラマシティ公演で、愛に飢えるプレーボーイを熱演している。憂いを秘めた表情は、米俳優レオナルド・ディカプリオの「寂しげな目」をイメージし、ダークな主人公に臨んでいる。12日まで。

 「愛」にあふれた宝塚では珍しい、愛に飢えたプレーボーイ役だ。

 「ハーレムの中心にいても、心地よくはないという…。衝撃作というか、大劇場ではできない作品です」

 女と酒、快楽をむさぼる男が主人公。夢、愛をテーマにする宝塚からは、最も対極にある世界観になる。

 「私自身も愛に飢えるとか、経験がない。でも、愛にあふれているからこそ、愛が足りない人のことを知りたくなってしまう」

 本拠地前作「るろうに剣心」では主人公と対抗する悪役、前回の主演作はアル・カポネ。ダークな役が続く。今回は冷たい目であしらうことで、女性が寄ってきてしまう設定。普段以上に「内面からの表現」を重視してきた。

 「特に目。心が映されるので」と言い、ディカプリオの「愛を求めるような芝居の目」をイメージ。けいこ場では、衣装に頼ることなく演技を磨こうと「ジャージーにTシャツでけいこをした」と振り返る。

 「男役をずっとやっていると、格好良く見せるしぐさ、表情に重点を置いてしまいますが、今回は、そうじゃない部分で見せたい」

 主人公は、ヒロインと出会い「愛」を知り変わっていくが「今回は特に“挑戦”作」と位置づける。

 「もともと私、自分(の中)にない(キャラクターの)方が、演じやすい」。望海の人柄を端的に言えば「誠実」。1つ1つの質問に向き合い、答えていく。「黒さ」は感じない。

 「でも実は、私の中にも、きっと潜んでいる。そこをあえて、出すのが楽しい。あり得ない人物を演じることで、眠っている感情を出すのは楽しいですね」

 人間、誰しもが持つ多面性を理解している。ただ、好んで着る服の色は「黒が…多いですね」と笑った。

 「最近は、休みは休もう! って。仕事を引きずらないように、気分転換に温泉に行ったり」。14年目にしてやっと「オン・オフの切り替えができるようになった」と明かす。

 きっかけは、前作「るろう-」合間のオフ。たまたま休日に遊びに出かけ、リフレッシュできた。

 「それまでは休みの時も、どっかにヒントないかな~って、ずっと探していて。でも、切り替えた方が、視野が広がるって、やっと分かりました(笑い)」

 東京公演中には故郷の横浜に足を運び、自然に触れ、夜景を見て、気分を一新してきた。今作は、すでに上演を終えたが、故郷で主演舞台を踏んだ。「いつかは横浜で主演公演をという夢がかないました」。宝塚にはまだまだ、望海がかなえていく夢がたくさんある。【村上久美子】

 ◆ミュージカル「ドン・ジュアン」(潤色・演出=生田大和氏) モリエールの戯曲、モーツァルト作のオペラ「ドン・ジョヴァンニ」で知られるスペインを舞台とした「ドン・ジュアン伝説」を舞台化。フラメンコをベースにした情熱的な楽曲でつづるミュージカルは、フランス発信で04年にカナダで初演。パリ、韓国などでも上演され、日本では今回が初演。

 セクシーなプレーボーイ、ドン・ジュアンが、愛を楽しんだ女の父から決闘を申し込まれ、勝利。だが「『愛』がお前への罰になる」との言葉を残され、その後に運命の女性と出会う。

 ☆望海風斗(のぞみ・ふうと)10月19日、横浜市生まれ。03年初舞台。花組に配属。09年「太王四神記」新人公演で初主演。10年「虞美人」で初の女役。12年「Victorian Jazz」でバウ初主演。一昨年11月に雪組へ移り、昨年1月「ルパン三世」ではカリオストロ伯爵。男らしい立ち姿、抜群の歌唱力で存在感を発揮している。身長169センチ。愛称「だいもん」「ふうと」「のぞ」。