米大統領選は8日(日本時間9日)、投開票され、共和党のドナルド・トランプ氏(70)が、民主党のヒラリー・クリントン前国務長官(69)を接戦の末に破った。

 近著に「大統領の演説」がある大統領選ウオッチャー、タレントのパックンことパトリック・ハーラン(45)のコメント

 トランプにも3割の可能性はあると言ってきましたが、これほどの圧勝とは予想しなかった。個人的には大変、残念です。勝因は、結果的には彼のすばらしい戦術だった「泥仕合」。アウトサイダーの彼がひどいことを言うたび、既成政治の汚さのイメージが増していき、彼が訴える既成政治からの脱出の支持拡大につながった。

 トランプはボタンを押すと世論が爆発する「ホットボタンイシュー」を突いた。中絶反対、銃規制反対、自由貿易反対と訴えた。そうだと共感した人が3%でも5%でも、その人口分は票が動いた。

 あとは、言いたくはないけれど、米国ではまだまだ差別主義が多い。トランプを支持した人は、白人が断トツに多い。移民反対とまで言わなくても、自分の周囲を見回し、自分の国が変わったなあと思っている人は多い。ヒラリーなら女性初の大統領だったが、米国の「ガラスの天井」はまだまだ健在ということだ。

 今後の日米関係について言えば、ほとんど変わらないと思います。米軍駐留経費の負担見直しは、まずできない。日本車の関税の大幅引き上げだって、今は日本車が何百万台も輸入されていた80年代の状況とは違うよ、と誰かがトランプに教えてあげるでしょう。選挙中は感情に訴えることを言っていたが、実現性は低い。

 危ぶまれるのは日米関係より、国際社会の中でのリーダーシップが足りないということ。権力の空白ができ、ロシアのプーチン氏、中国の習近平氏が力を伸ばすだろうが、それを彼は止めないだろう。NATO、APEC、OPEC、国連など国際社会との関係に不安が広がり、間接的な影響は日本にも及ぶでしょう。

 トランプが勝って良かったことといえば、お笑い芸人が4年間は仕事に困らないということくらい。4年間は、ばっちり稼げます。あとは2年後の中間選挙か、4年後に、強いぶり返しが来るはず、ということくらいですね。