外来で時折、他院の大腸カメラの結果を持参して、「ポリープがあるにも関わらず放置された。切除してほしい」と希望する方がいます。

 ポリープと聞くだけで一般の方には嫌なイメージがあるのでしょう。しかし、われわれ医療従事者が意味するポリープは簡単に言うと「盛り上がっているできもの」に過ぎません。そのものが良性であっても、悪性つまりがんであっても盛り上がったものはポリープです。

 医者が放置することを選択した時点で、おそらくそのポリープはがんではありません。他院で内視鏡を行った際の写真や結果の用紙を見ても、大概は良性のポリープです。良性のポリープには大きく分けて2つのポリープがあります。過形成ポリープと腺腫です。私たち内視鏡を行う医師は90%以上この良性のポリープを表面の模様から切除せずとも診断できます。

 過形成ポリープは一生がん化しないポリープです。がん化しない割に個数は多く、特に肛門に近い直腸やS状結腸に多発することが多いポリープです。「“たくさんあるけど大丈夫ですよ”と医者から説明を受けたが、納得がいかない」と来院される方を何人も見ました。「たくさんあるけど大丈夫」と言われたら、過形成ポリープが多いという意味で、切除の必要はまずありません。

 一方、大腸ポリープのうち80%を占めるとされる腺腫は、全てがん化するわけではありませんが、がん化することがあります。以前は腺腫は全てがん化すると考えられていたこともありました。しかし、実際にはがん化する腺腫の数はそう多くはないことが分かってきています。

 がん化する腺腫は徐々に大きくなり、諸説ありますが5~10年程でがん化するとされています。1センチを超えるサイズとなると、突然がんを含む可能性が高まります。全ての腺腫を切除するとかなり時間を要します。取らなくていいものも多いので、5ミリ以上のポリープを切除対象としている病院もあります。

 小さなうちにがん化することを予測することは困難です。当院では腺腫と考えるポリープがあったら、患者さんとも相談した上ですが、なるべく切除させてもらっています。

 ◆池谷敬(いけや・たかし) 1981年(昭56)9月21日、静岡県出身。浜松医科大卒。2012年から東京・中央区の聖路加国際病院勤務。内視鏡で粘膜下層を剥離するESDという手法で、大腸がんに挑んでいる。