将棋のプロ棋士、三浦弘行9段(42)が27日、ソフト不正使用の証拠はなかったとする第三者調査委員会の報告を受けて東京都内で会見し、「ご心配をお掛けして申し訳ない。復帰して頑張りたい」と早期復帰を願った。

 騒動後初めての公の場で、三浦9段がまず口にしたのはおわびの言葉だった。「潔白を信じて応援してくださった方、ご心配をお掛けしたことを、申し訳なく思っております」と、頭を下げた。

 ソフト不正使用の疑いから、竜王戦への挑戦権を取り上げられ、周囲からも疑いの目を向けられた。「私個人のことなら、なんとか耐え切れた。だが、家族がまいってしまった。なんでこんな仕打ちを受けなければいけないのか」。家族の苦しみを思い出し、目を赤くする場面もあった。10月の疑惑浮上から約2カ月半。第三者委の調査で「潔白」を証明されても、晴れ晴れとした気持ちにはほど遠かった。

 調査では、ソフト使用を疑われた対局での、長時間の離席そのものがなかったことも分かった。疑惑の真偽が分からない時点で、出場停止処分を下した連盟に対しては「無理なのでしょうけど、元の状態に戻してほしい。竜王戦のやり直しができれば…」。怒りよりも、疑いをかけられたこと自体への寂しさが込み上げた。

 出場停止は年内で終了する。だが1月3、4日に出演を予定していたファン向けイベントは、連盟からの要請で、辞退せざるを得なかったという。対局復帰に向けては「2カ月半以上、将棋の勉強どころではなかったので…」と不安な思いを明かした。それでもプロ棋士として「言い訳はしてはいけない職業。騒動が落ち着くのも時間がかかると思うが、早く(将棋の)駒に触れて、自分の範囲で努力したい」と前を向いた。【小松正明】

 ◆三浦弘行(みうら・ひろゆき)1974年(昭49)2月13日、群馬県生まれ。師匠は西村一義9段。92年に18歳で4段に昇格し、プロデビュー。96年の棋聖戦で当時7冠の羽生善治氏を破り注目された。タイトル獲得1期(棋聖、96年度)、順位戦A級通算15期。優勝はNHK杯戦(02年度)将棋日本シリーズJTプロ公式戦(15年度)新人王戦(98年度)。

<三浦9段の一問一答>

 -第三者委の報告について

 三浦9段 不正はしていないので自信はあった。「シロ」が出てくるのは当たり前。不正がそもそもなかった上に、不審な点もなかったのであれば、なぜ私を(竜王戦に)出さなかったのか。そこが一番驚いた。

 -(週刊誌の報道では)対戦するはずだった渡辺明竜王にも疑惑を追及された

 三浦9段 本来、7番勝負で戦う相手。まさか疑われていた、そんな風に思われていたとは…。何度も対局しているから(不正はしていないと)分かると思うが。残念です。

 -棋士たちについてどう思うか

 三浦9段 最初から私を信じてくれていた棋士もいるが、言いたくないが、疑った棋士がいる。(今後)気持ち良く対局に臨めるかといえば…。ただ、勝負師なので、感情に左右されることなく、対局に臨まなければいけないと思う。