「事件前とは違う生活になった。悔しくてたまらない。犯人を許せない。犯人がツイッターに『死んでしまいたい』と書き込んでいた。その言葉通りに死んでしまってほしい」。冨田さんの怒りがにじみ出た。「それが無理なら一生刑務所に入ってほしい。出てきたら、今度こそ私を殺しに来る」。今でも岩埼被告に恐怖を感じているようだ。

 それでも、芸能活動再開への意欲を失っていない。「顔に大きな傷があるから、女優は無理。口が大きく開かないので、伸び伸びと歌えないが、大好きな歌の仕事まで犯人に奪われたくない。週に1回、病院でリハビリをしています」。神経の損傷で口を動かせない症状を克服し、シンガー・ソングライターとして復帰する考えを示した。

 事件直後、脳に血液が供給されなかった影響で左目の視野が狭くなり、心的外傷後ストレス障害(PTSD)で近所を1人で歩くことも困難。それでも顔の傷をきれいにするレーザー治療を受けるなど、前向きな姿勢を保っている。

 冒頭陳述によると、岩埼被告は冨田さんに本や腕時計をプレゼント。送り返され、怒りや屈辱感を募らせ、冨田さんを襲撃した。検察側は「執拗(しつよう)で極めて残忍。被害者の将来に大きな影響を与えた」と主張した。審理は23日まで続く。【柴田寛人】