任期満了にともなう兵庫県知事選が15日、告示され、新人でコラムニストの勝谷誠彦氏(56)は、三宮駅前の事務所で出陣式を行い、その“第一声”は「恥ずかしい」だった。

 淡い水色のスラックスに白い襟付きシャツ姿の勝谷氏は、薄茶色のめがねで、髪の毛も伸びて前髪を下ろしていた。「スラックス? もう20年以上ぶり、ぐらいだよ」。超短髪で色の濃いサングラス、衣装はデニムが定番の勝谷氏だったが、この日は「朝、着替えさせられた」と、好感度アップをねらって、選挙戦ルックで出発した。

 実はこの日も当初、事務所カラーの濃い水色のTシャツに、刺しゅうの入った自慢のブルーデニムを着て事務所に待機していた。ところが「ダメ、着替えろって」と言われ、スラックスにシャツの装いで再登場したのだった。

 髪の毛も出馬表明してから伸ばしたといい「好感度アップ? そう!」と笑い、めがねも「薄い色にした」。実は斜視に悩み「高校時代からサングラス着けてるし、斜視の人間はどこ見てるか分からないって言われるから、コンプレックスがあるんだよね」とも明かした。

 葛藤も、こだわりも脱ぎ捨て、県知事選へ全力投球。永遠のやんちゃ青年のイメージは封印し「だから、尼崎の風俗も行かなくなったわ」と語った。

 出陣式では支援者に「100カ国ぐらい歩いたし、マスコミも上から下までやった。人生たいがいのことは経験したんで、あとは兵庫県知事と芥川賞ぐらい。県知事やった後に芥川賞とります」とあいさつし、事務所をたった。

 演説の第一声は、国際会館前の交差点を選んだ。事務所からは数分の距離で、歩いて移動。待機していると、現職で5選を目指す井戸敏三氏(71)の車が通りかかった。井戸氏の車から「勝谷さん、がんばってください!」の声が聞こえてくると、勝谷氏は「長い間、お疲れさまでした。兵庫県政、ありがとうございました」。

 井戸氏の車は交差点を左折し、その先に同じく立候補した新人で元同県加西市長の中川暢三氏(61)もいたことから、今度は井戸氏の車から「中川さん! がんばってください」。勝谷氏も「中川さん!」と反応し、異例の“3者エール交換”で、17日間の選挙戦がスタートした。

 勝谷氏は、知事に就けば自らが観光や食のセールスを進めるといい「一番の柱は教育」と話しており、第2子以降の保育料無料、知事任期を2期までとする条例制定も掲げている。

 演説では「井戸さんがいけないのではなく、4期16年は長い。長いこと同じ体制でやっていると、周囲が忖度(そんたく)するようになる。ここはひとつ、リフレッシュしないといけない」と訴えた。

 また、テレビ出演による知名度や、コラムニストとしての活動経験から「個人技としての情報発信力はありますから」と呼びかけていた。

 県知事選にはこの日、勝谷氏、井戸氏と、新人で県労連顧問の津川知久氏(66)、中川氏の4氏が立候補を届け出た。

 投開票は7月2日。