お正月の買い物の楽しみと言えば、福袋。最近の百貨店は、価格以上の商品をこれでもかと入れてお買い得感を出す「モノ袋」だけでなく、さまざまな体験ができる「コト袋」を目玉にしている。中でも面白そうなのが、「鉄道婚」の福袋だ。東京・池袋の西武池袋本店は西武鉄道、東武百貨店が東武鉄道の列車を使って、商品化した。ほかにも、将棋、防災など、趣向を凝らした体験型の新年企画がそろっている。

 鉄道大好きのカップルにはたまらない「コト企画」が、福袋として登場した。

 西武池袋本店では、レストラン車両「西武 旅するレストラン『52席の至福』で挙げる貸し切りブライダル福袋」を1組限定(2018年1月1~4日に店内で応募、抽選)を201万8000円で販売する。新郎新婦を含む26人でのブライダルプランだ。電車内を披露宴の会場とし、世界に1つだけの思い出を演出してもらう。

 昨年4月に西武鉄道が運行を始めた「52席の至福」では、ブライダルパーティーをすでに売り出しており、2組が挙式済み。同店でも今年、この車両での「ディナー福袋」を販売し、好評だった。「百貨店の枠から飛び出し、グループ企業との提携や異業種との新たなタッグで、買うプラスアルファの付加価値をつけたい」と同店では説明する。

 東武百貨店も、今年8月から栃木・下今市~鬼怒川温泉間で運行を開始したSL大樹での結婚式を、福袋に投入してきた。その名も「東武鉄道SL『大樹』ウエディング福袋」(1組限定、12月26日~1月2日に店内で応募、20万1800円)。結婚記念日のお祝いも可能としている。

 下今市駅の転車台広場で昭和レトロな制服を着て、人前式。1両貸し切りとし、日光金谷ホテルでの食事、宿泊などがセットとなっている。グループ会社として盛り上げて行こうと提案し、東武鉄道側からも快諾してもらった。「本当に鉄道が好きな人向けの企画。非日常的な空間での特別な体験を提供ができるのが、福袋の醍醐味(だいごみ)」と同店は強調する。

 新しく迎える年の西暦を金額にするとか、干支(えと)に合わせる、流行の世相を反映するのが、福袋の王道。だが、「コト企画」なら、普段やりたいと思ってもできないことが実現できる。そんな18年の初夢が含まれている。【赤塚辰浩】

 ◆百貨店の福袋事情 元プランタン銀座で福袋の企画・広報担当だった三井智子氏によると、「90年代までは、行って、買って、中に入っている物は開けてからのお楽しみという意味合いが強かった」という。1万円で、おおよそ5万~6万円相当の、家族の誰かが喜ぶ生活用品や衣料品が詰め込まれていた。

 各百貨店では、次第にターゲットに合わせて誰が何を買うのかという商品の切り口を重視。車や豪華客船ツアーなど、事前に目玉を明らかにし始めた。最近では11月上旬にお披露目会を行い、盛り上げている。