2018年の世相を一字で表す「今年の漢字」が「災」に決まり、日本漢字能力検定協会が12日、京都市東山区の清水寺で発表した。
<各界著名人が選んだ今年の一文字>
▼今年のJリーグで最も話題を集めたヴィッセル神戸イニエスタの一字は「楽」。日本での挑戦を選んだ理由に「サッカーだけじゃなく、日本の文化を学びたい」と話したように家族で京都の寺院などに出かけ、書にも興味津々。「楽」には「日本で“楽”しく過ごしたい」思いと親会社“楽”天へのリスペクトが含まれる。加えて見ている側にも“楽”しいプレーを連発。来季も“楽”しみだ。
▼J1リーグ連覇を達成した川崎フロンターレ中村は「連」と記した。「2回勝たないと“連”はつかない。積み上げ、連なるという意味を込めました」。昨年は「芯」で、チームも選手もぶれずに「芯」を貫き悲願のタイトル。今季は確固たる「芯」に日々の練習にさらなる質を追求し、リーグ最多得点、最少失点で完全優勝。「日々のつながりが最終的に連覇に。去年の芯ができたことでそれがつながっている」と話した。
▼中日根尾が選んだ漢字は「進」だ。ドラフトで4球団が1位競合した逸材。「今年は進歩しましたから」と、読書家の18歳がひねり出した一字だった。史上初となる2度目の甲子園春夏連覇に貢献。U18日本代表でも中心選手として活躍した。投手との二刀流に注目されたが、遊撃手1本でプロの世界に飛び込んだ。根尾の進歩はこれからも続く。
▼西武山川は数秒考えて「伸」としたためた。書道8段の腕前を披露。「もっと伸びたいからです。野球も、人間としても」と説明した。5年目の今季、47本塁打でタイトル獲得。パ・リーグMVPにも輝いたが、「エラー王、三振王でもある。50点ぐらいです」と満足していない。来季はググッと伸びて、50本塁打、さらに楽天に移籍した浅村の127打点を超えるのが目標だ。
▼日本シリーズは広島の試みた6盗塁すべてを刺し、強肩「甲斐キャノン」として一躍有名となったソフトバンク甲斐は「悔」の一字を書き記した。「最後は日本一になりましたが、やっぱりシーズンが2位だったので悔しいですね。その思いの方が強い。打撃でももっと打てないと」と球団初の下克上日本一にも浮かれなかった。「来年は『喜』という字になればいいですね」。有言実行する。
▼上田監督は「動」を選んだ。300万円で製作した映画「カメラを止めるな!」が、大きく変わる展開と数多くの伏線が絡む物語が話題に。都内2館で6月23日に公開も“ネタバレ厳禁”の合言葉がSNS上で拡大し全国350館超での拡大上映、興行収入30億円超の大ヒットを記録した。「人生や映画業界…いろいろなものが動いた年です」と笑みを浮かべた。
▼ラグビー日本代表・流(サントリー)は「挑」の漢字を選び、「チャレンジする姿勢を忘れないように、1年間プレーしてきた」と説明した。主将を務める所属先だけでなく、日本代表でもリーダーシップを発揮して、チームの中核に成長した。19年9月20日には、日本開催のワールドカップ(W杯)が開幕する。「来年も今年以上に挑戦して、良い結果につなげたい」と意気込んだ。
▼JRA騎手のルメールは「超」の1画1画に力を込めた。「うん! まあまあ上手(笑い)」。1日の阪神競馬場で、武豊騎手に次ぎ史上2人目のJRA年間200勝を達成。G1・6勝はすでに年間最多タイだ。「今年は素晴らしい年でした。でも、まだ終わってない。武さんのレコードを取りたいです」。同騎手が持つ年間最多勝記録、212勝(05年)超えへ走り続ける。
▼陸上の山県は「律」を選んだ。「1年を通してケガもなく、パフォーマンスも高く、安定して力を出せた。心と体をコントロールできた結果かな」。6月の100メートルを10秒06で優勝、8月のアジア大会では自己ベストタイの10秒00で銅メダル。「アジア大会前に3試合組みましたが、1試合目で体の違和感を感じて残りを欠場したことで結果が出た。気持ちをコントロールできた」と説いた。
▼尾畠さんは今年8月、山口県周防大島町で行方不明になった2歳男児を山中で発見し、「スーパーボランティア」と呼ばれ一躍、時の人となった。大切にしている言葉を一筆お願いすると「絆」と書いた。その後に「朝は必ず来る 命は一つ 人生は一度 一歩前進 一期一会 人を大きく 己を小さく 人にやさしく 己にきびしく」と続けた。
東日本大震災では宮城県南三陸町に延べ約500日間滞在し、津波で流された思い出の品や遺品を捜す活動に従事。今夏の西日本豪雨の被災地では、土砂の撤去作業などに従事した。
「皆さんが困っているところで、私が泥くさく作業をして、何か恩返しができればと思ってやっている」。見返りに何を贈っても、水とお茶以外は受け取らない。尾畠さんの一筆は、人類の普遍的な教訓のようにも見えた。
▼小学校建設の補助金をめぐる詐欺罪で起訴され、5月に保釈された学校法人森友学園(大阪市)の前理事長、籠池泰典被告(65)に今年の漢字を問うと「奸(かん)」と書いた。
「奸計(かんけい)をめぐらせる。人をおとしいれるためのはかりごとの『謀略』よりもさらに上のレベルの言葉。国のトップに立つ人のよこしまな考えが、いまこの国に、はびこっている」
保釈まで大阪拘置所で約10カ月の長期勾留を強いられた。大阪府豊中市内の自宅は競売で落札され、現在は同府内の別の場所で暮らしている。来年には裁判が控える。安倍政権に対して「国民から信頼されていない」。新著「許せないを許してみる 籠池のおかん『300日』本音獄中記」を出版した妻の諄子(じゅんこ)被告(62)は夫の1字について「さすがお父さん」とうなずいた。
▼秋の自民党総裁選で安倍首相に挑んだ石破氏は「挑」と書いた。「リスクを取ることを恐れてはいけない。まもなく平成も終わり、人口は急減し、世界情勢も変わろうとしている。今までと違う状況が我々の前にある。挑むことを止めたら、衰退だけが待っている。国会議員は公のために働く。自己保身は考えず、挑む姿勢はなくしたくない。来年もそうありたいですね」。
▼水泳・池江がしばし考えて記したのは「環」。コーチの変更もあった18年に、「環境が変わったという意味で、今年アジア大会、パンパシで世界にもまた1歩近づけた。世界という意味でも選びました」。20年東京オリンピック(五輪)での頂点を目指すために、新たな「環(わ)」が開けた1年となった。