安倍晋三首相は18日、検察官の定年を延長する検察庁法改正案の今国会成立を断念した。自民党の二階俊博幹事長と会談し、国民の理解なしに前に進めることはできないと一致した。安倍氏は「国民のみなさまからさまざまなご批判があった。趣旨や中身について丁寧にしっかり説明していくことが大切だ」と話した。法案の取り下げはせず、今秋想定の臨時国会などで審議する見通し。

コロナ禍のどさくさに紛れて成立を急いだ法案は、週内にも衆院通過の方針だった。しかし、野党、日弁連、著名人はじめ市民らの大規模なツイッターデモ、元検事総長ら検察OBの異例の反対意見書など、社会から猛反発が起きた。

法案には、内閣や法相が認めれば検察幹部がポストに残ることができる特例規定が盛り込まれた。政権に都合の良い幹部をポストにとどめられる仕組みが生まれることになる。世論では、検察の信頼や独立性が揺らぐとの指摘や、政権に近いとされる黒川弘務東京高検検事長を閣議決定で定年延長したことの正当化だとする批判が高まっている。

野党はインターネット上の反対世論の沸騰が政府、与党を動かしたとして「画期的だ」(国民民主党の玉木雄一郎代表)と評価。「法案が今の形では、秋の臨時国会でも同じ目に遭う」と述べ、特例規定の削除を要求した。立憲民主党の枝野幸男代表も「日本の民主主義にとって大きな前進だ」とし「引き続き(特例規定を)切り離すべく努力する」と語った。

会員制交流サイト(SNS)上では18日、引き続き抗議を求める投稿が相次いだ。ツイッターで反対運動のきっかけとなる「検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグ(検索目印)を付けた投稿を8日にした30代の女性会社員は取材に「本当にうれしい。駄目もとだったが、こんなふうに国会が動くと思っていなかった」と述べた。