東京・池袋の都道で19年に乗用車が暴走し、松永真菜さん(当時31)と長女莉子ちゃん(同3)が死亡し、9人が重軽傷を負った事故で、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)罪に問われ禁錮5年(求刑禁錮7年)の実刑判決を受けた、旧通産省工業技術院元院長・飯塚幸三被告(90)が、控訴期限の16日に控訴せず、実刑が確定した。

遺族の松永拓也さん(35)は17日、都内で開いた会見の中で「加害者であっても被害者であっても、誹謗(ひぼう)中傷を受けない世の中であって欲しい」と訴えた。飯塚被告が逮捕されず、在宅起訴されたことに対し、元高級官僚だったからではないか? などとインターネット上で疑問や臆測、批判の声が相次ぎ「上級国民」などという言葉まで飛び交った。松永さんは「上級国民とか、逮捕されなかったことは本質ではない。交通事故が年間、30万件起きていて、どうすれば、そういう事故が防げるのか、ということが本質」と訴えた。

その上で「過度の社会的制裁が減刑の1つ。健全な議論を超えて脅迫になってしまったことは、私は望んでいなかった。それが減刑理由になることも分かっていた。過度の社会的制裁で減刑になったのは悲しく思う。加害者も、そういうことは受けていたと思うし、私もインターネット上で誹謗(ひぼう)中傷を受けていた」と語った。

16日にはインターネット上の誹謗(ひぼう)中傷対策として、上川法相が刑法の侮辱罪を厳罰化し、懲役刑を導入する刑法改正を法制審議会(法相の諮問機関)に諮問した。松永さんは、そのことを踏まえ「加害者の事故後の言動が批判されることは、やむを得ないが、事故は誰しも起こすもの。過度な批判は分断に繋がる」と声を大にした。