でんめおやじことメディア戦略本部石井政己(57)が5月21日、初の西伊豆に挑戦してきた。神奈川・平塚の湘南平をスタートし、伊豆半島を時計回りに1周した後、三島から真っ暗な箱根を上って旧街道をダウンヒルし、湘南平へ戻ってくるというスーパーコース「BRM521青葉ブルベ伊豆300」に参加した。6年ぶりの300キロだったが、過酷なアップダウンが続き、鉄道がなくてリタイアもできず走り続けるしかない西伊豆を、果たして無事に走り切れたのか。


西伊豆の出逢い岬
西伊豆の出逢い岬

 「厳しいコースです。自信の無い方はエントリーを控えて下さい。また下田以降はエスケープポイントがありません。リタイアとなった場合も交通機関がありませんので、自力で帰って頂く必要があります。それらをご理解の上でエントリーなさって下さい」と、VCR青葉公式サイトのコースガイドには脅し文句があった。う〜ん、自信はないけど一度は走ってみたいんだなぁ、西伊豆。


 過去に西伊豆は一度走ったことはあるのだが、その時は下賀茂から蛇石峠を抜けるコース。さらに土肥から内陸へ入り、土肥峠を越えて三島へ向かったので西伊豆はほとんど走っていない。機会があれば、ちゃんと1周したかったこともあり、脅し文句に負けず、ドキドキしながらもエントリー。スタッフのKさんによると、蛇石峠経由に比べ獲得標高が1000メートルほど高くなるようだ。


ルートマップと標高図
ルートマップと標高図

 このブルベには通過チェックのPC(コントロール・ポイント)に趣向が凝らしてあった。通常であればコンビニのレシートが通過チェックに使われるのだが、今回のPC1から3までは風景とブルベカードを一緒に撮った写真をメールで送ることが通過チェックとなる。ブリーフィングでは電波状態により送れないケースもあるので、ゴール後のチェックでもいいとされたが、電源が切れ確認できなかったらアウトとなるらしい。この趣向は面白そうだが、補給のためにPC以外でストップする必要が出てくる。西伊豆に入ると数十キロにわたってコンビニがない区間もあり、事前にどこで補給ストップするかを決めておかなくてはならず、生きて帰るためには慎重な事前準備が必要だ。


 エントリーした時はスタート地点は平塚市内としか記述されておらず、駅の近くかなと予想していたら、なんと湘南平になった。箱根を上った後に「頂上ゴール」なんてネタはいらないんだけどなぁ…。おまけに車を下に置き、集合場所まで上らなくちゃいけないのかと思うとうんざりしたが、直前になって上の大駐車場を使用しても構わないことがアナウンスされ、とりあえずひと安心した。


 当日は午前3時過ぎに起床。車で向かったが、やはり自走で上っているブルベライダーを見かけた。えらい!


 募集は65人だったが珍しく満員とはならず、エントリーは54人(実際にスタートしたのは41人)。しかし、コースがコースだけに全員がブルベの精鋭に違いない。


スタート地点の平塚・湘南平
スタート地点の平塚・湘南平

スタート受け付け
スタート受け付け

 天候は晴れで、雨予報はない。昼間には気温が上がりそうだが、早朝はひんやりとする。半袖ジャージーにレーパン、そしてアームウオーマーを付けてスタートした。サドルバッグやバックポケットには夜の箱根からの下りなどを考え、長袖ジャージー、長袖インナー、レッグウオーマー、モンベルの超軽量ウインドブレーカーを入れた。また緊急時に備え、スニッカーズ2本、クリームパンも滑り込ませた。


 10年5月の青葉400キロ以来、6年ぶりの300キロ。不安と緊張があったが、走り出すとそんな事は忘れた。


 まずは68・4キロ地点のPC1、川奈・いるか浜公園を目指す。


 ほぼ先頭でスタートしトレインに付いていたのだが、湯河原の先の伊豆山の上りや、写真ストップしている間にごぼう抜きされ、熱海から先はほぼ一人旅となった。


熱海付近
熱海付近

 網代の先にある57キロ付近のコンビニで予定通り軽く補給。


伊東付近
伊東付近

 熱海から先はあまり信号もなく、ほぼ平たん。海岸線を伊豆多賀、網代、宇佐美と過ぎ、伊東の先からは国道135号に別れを告げて海沿いの道を気持ち良く走り、あっという間に川奈・いるか浜公園。ここまでのグロス平均時速は20キロを超え、冗談ではなくあっさりとここまできた。


川奈・いるか浜公園
川奈・いるか浜公園

【PC1 68・4キロ 川奈・いるか浜公園】午前8時40分(貯金1時間52分)


 公園はブルベライダーで大盛況。「どうやるんだっけ」「時間かかるなぁ」「あ、送れない」。みんなスマホや携帯を見つめぶつぶつ言いながらながら、必死の作業。普段のブルベでは見られない光景だ。


ブルベカードとともに記念撮影。これをメールで送って通過チェック
ブルベカードとともに記念撮影。これをメールで送って通過チェック

 いるか浜公園からは急坂を一気に上った後、里山を走る感じの道が続き、伊豆高原付近で再び国道135号に出る。このコースはいつも渋滞し上りも延々と続く国道が回避でき、ぐらんぱる公園の少し先の下りに入った城ヶ崎入口の信号にでるので獲得標高も車も少なく、好きな道だ。


 伊豆高原を豪快に大川まで下り、あとは北川、熱川、白田温泉、稲取、河津と町が来るたびにアップダウンを繰り返す。だが、この坂は距離も短くたいしたことはない。そして白浜海岸の坂を上って下った先は下田。


 この東伊豆の高速区間でできるだけ貯金を稼ぐ必要があるのだが、滅多に来れない所へ来るとストップしたくなるのが人情。道の駅開国下田みなとでトイレと写真ストップ。しばしの間の〜んびり。天気も良くて気持ちいい。


道の駅開国下田みなと
道の駅開国下田みなと

道の駅開国下田みなとの坂本龍馬像
道の駅開国下田みなとの坂本龍馬像

 下田ではちょうど「黒船まつり」(5月20〜22日)の真っ最中。駅前はすごい人で、パレードにでも巻きこまれたらやばいなと思ったが、すんなり通ることができた。後で調べると、パレードは午前11時半スタートで、駅前も通る予定になっていた。実はここを通過したのが11時15分。危なかった。


下田駅前。ちょうど黒船祭りが開催されていた
下田駅前。ちょうど黒船祭りが開催されていた

 緩やかな上りの国道をそのまま進むが、下賀茂方面への分岐で国道を離れ、直進して県道16号へ。すぐ右手に約30キロ先の松崎までの最終コンビニがあるが、101キロ地点の稲取のコンビニで補給は済ませており、ボトルもダブルだったこともありスルーした。


 ここから先は未知の世界。過去2度のブルベで下賀茂方面へ行ったことがあり、一度はそこから蛇石峠を越えて松崎から西伊豆を走り、土肥から内陸へ行って土肥峠を越えて三島へ向かった。7年前のこの時は青葉ブルベ「座間600」でこの後、裾野〜本栖湖〜野辺山〜十石峠〜志賀坂峠〜秩父〜山伏峠と走る600キロのコースを完走したのだが、伊豆半島は南伊豆と土肥から先を走れず、正確には1周できていない。この事がずっと心残りだったのだが、個人のツーリングで簡単に西伊豆は走れない。今回のブルベはいいチャンスだった。


 弓ヶ浜大橋を越え、いよいよ南伊豆へ入る。スタッフによると蛇石峠を走るコースと比べると、松崎までは獲得標高が1000メートルほど違うらしい。やっぱりきついのか…。


弓ヶ浜大橋
弓ヶ浜大橋

 最初は海岸沿いを走るほぼ平たんな道で、小さな港をいくつか通り過ぎていく。やがて石廊崎灯台への分岐を過ぎるとアップダウンが始まり、少しきつい坂を上っていると左手の広場に反射ベストの自転車乗りが数人いるのが目に飛び込んできた。ということはここがあいあい岬か。誰もいなかったら通り過ぎていたかも。


【PC2 138・1キロ あいあい岬】午後0時8分(貯金2時間56分)


あいあい岬でブルベカードとともに記念撮影
あいあい岬でブルベカードとともに記念撮影
あいあい岬の売店
あいあい岬の売店

 ここまで来てもグロス時速20キロを大きく超えており、快調そのもの。南伊豆に入ってからは車の通行量も少なく、信号もほとんどなくて快適なライドが続いている。ただ後のことを考えると3時間以上は貯金が欲しかったところだ。そして、ここからがこのブルベの本番。「あいあい岬折り返しの300キロだったら楽に15時間が切れるなぁ」なんて思っても仕方ないのだ。


 お昼どきなのでさすがに空腹感を覚え、サドルバックからクリームパンを出して2つ食べたのだが、口の中が乾いていたせいかノドに詰まりそうになった。年も年なんで気をつけないと…。


 売店にいた女性に「頑張って」と声援を受け、スタート。この女性はドライブできていたカップルに名所の説明などをしていた。時間があれば聞きたかったな。ソフトクリームも美味しそうだった。


 アップダウンを繰り返して差田交差点から国道136号に入る。いよいよマーガレットラインだ。軽く上って妻良港まで下りきったところから本格的な上りが始まる。峠道ではないので直線的に上る、精神的にはきつい坂。「峠でもないのになんでこんなに上るのかなぁ」なんてため息をつきながら上っていると、それを察したかのように道はやがてクネクネとした峠道になってきたので思わず笑いが出た。最初のピークまでは3キロほどの登坂だったろうか。その後は「下って上って上って、下って上って上って上って」という感じ。結局は海べりの海抜数メートルの石部交差点に向かって一度ズド〜ンと下りきるのだが、上った距離の方が長いような気がして何となく損した気分だった。


 この上りで最後のピークへ向かう途中で気になる「目」の看板があった。


怪しい「目」の看板
怪しい「目」の看板

 最初は草むらに隠れており「自転車で上ってないと見えないな」と思っていたのだが、その後は「あと○キロ」と○の数字を更新しながら目立つ位置に何本か立てられていた。また、「アジア雑貨」とあるところはずっと「ネパールカレー」と書かれており、看板の「にらみつける目」とともにどんな店なんだろうと気になっていた。


 その店はなんとピークにあった。看板は結果的に我々自転車乗りにピークまでの距離を丁寧に教えてくれていたのだ。山側にあり、立派な店構えで海側には展望台もあったが、ここで時間をロスしたくなかったのでそのまま下り降りた。お客さんも結構入っている様子だったので、次回(があれあば、だが)はここでカレーを補給しようかな。


ピークにあったネパールカレーの店
ピークにあったネパールカレーの店

 下りきった石部交差点は二十数キロぶりの信号。これに幸か不幸か引っかかる。平たん区間は一瞬で、信号の先はすぐ上り。一気に行かせてほしかった。


雲見大橋
雲見大橋

夫婦岩?
夫婦岩?

 このあたりからひと山越えて、平たんな松崎までは「富士見彫刻ライン」、というのを後で知った。道路沿いに彫刻が次々と現れるのでびっくりした。なんでここにこんなものがあるんだろう? と不思議に思いながらも、シャッターを押せるタイミングがなかった。調べて見ると、地元の学生や彫刻家のグループが作成したもので、全部で21体あるそうだ。写真に収められなくて、残念。


 松崎で少し足を休めた後は、再び堂ヶ島温泉へ向かって上りが始まる。新安良里トンネルでいったんピークになり宇久須まで下った、約185キロとなるセブンイレブンで補給した。天気は良く日差しもあるが、風はやや冷たい。そのため、ボトルの水の消費量もそれほど多くなく、予定通りのコンビニ補給で足りている。


 宇久須からは恋人岬までが上りで、そこから土肥までが下り。7年前の「座間600」ではここから内陸へ入ったため、この先も未知の世界だ。


恋人岬
恋人岬

 土肥を過ぎるとすぐに「土肥金山」。娘たちが小さいころ、家族で西伊豆の民宿に泊まって海水浴を楽しみ、金山にも行った記憶がある。長女は覚えていなかったが、次女は「金箔のところ? 金のなんか買ってもらったから覚えてる」。現金な記憶だ。


土肥金山
土肥金山

 しかし、そんな所へ自転車で来る日がこようとは。人生、何が起きるか分からんね。


 実は、その時は伊豆をもちろん車で横断し、川奈のいるか浜でも泳いだ。なんという巡り合わせだ。


 土肥からも長い長い上りをインナーローで辛抱強く上り続た後、戸田へ転がり落ち、すぐにまた上りが始まる。西伊豆の容赦ないアップダウン。下ったと思ったら、すぐに上り。足を休めるヒマもない。


まだ午後3時台。夕日にはまだ早い
まだ午後3時台。夕日にはまだ早い

 出逢い岬へ向かう上りの途中で200キロ。経過時間はほぼ10時間と、何とかグロス時速20キロを維持しているが、この先で落ち込んでくることは間違いない。貯金を4時間台にして箱根へ向かうことができれば、15〜16時間台で完走できそうなのだが…。


【PC3 211・8キロ 出逢い岬】午後4時37分(貯金3時間27分)


出逢い岬でブルベカードと記念撮影
出逢い岬でブルベカードと記念撮影

 出逢い岬には2〜3人のブルベライダーがいた。眺めも良かったので少しまったり。貯金は残念ながら4時間台までもっていけず、3時間半程度。だが、これを維持すれば16時間台のゴールだ。


 出逢い岬で上りは終わりかと思ったが、目の前には急坂が待っていた。


 そして下った後はまたきつい上り。この先もこの繰り返しなのだろうか。峠は予習して何キロの上りか分かるが、アップダウンは予習してもよく分からない。次のPCまで40キロ。貯金は3時間を切るかもしれない。


 西伊豆と言えば、夕日。しかし、太陽はまだ上の方にいる。遠方は雲がかかり富士山もまったく見えない。残念…。


 ようやくピークにたどり着き、大瀬崎へ向かって下るが、寒さを感じたので途中の富士見展望台でストップ。アームウオーマーとレッグウオーマーを付ける。


富士見展望台。天気が良ければ富士山が見えるのだが…
富士見展望台。天気が良ければ富士山が見えるのだが…

 北伊豆の海岸線の道は期待をうれしい意味で裏切ってくれた。アップダウンを覚悟していたが、海沿いの平たんな道がどこまでも続いてくれた。だが、時速25〜7キロぐらいしか出ないので、地元らしき自転車乗りのトレインや、ブルベライダーにぶち抜かれた。


北伊豆は平たんな道が続く
北伊豆は平たんな道が続く

 ハンガーノック気味になってきたので、乗りながらスニッカーズをパクつく。非常食を持ってきて良かった。コンビニ不毛地帯で、水分補給は自販機でできるが、食べ物は手に入らないからね。


 237キロ付近の三津のセブンイレブンで最後の補給。14キロ先に最後のPCがあるが、ローソンなのでnanaco派としてはセブンがありがたい。


 そこで先ほど抜かれたトレインにいた女性に声をかけられた。


 反射ベストを着ていたのでブルベと分かったのだろう。


 「今日は何キロですか?」

 「300キロですね」

 「あと何キロ?」

 「65キロぐらいです」

 「じゃあ、もう完走ですね」

 「いや、これから箱根上りますから」

 「わあぁ、上りたくない」

 

 うん、僕も上りたくないんです。


 口野放水路で伊豆1周の旅は終わり。三島を目指す。そしてラスボスの箱根だ。


 夕闇が漂い始めた国道136号をぶっ飛ばし、南二日町ICから国道1号へ。あとは1本道だ。


 ところが2キロぐらい走っても、セブンはあったがローソンがない。おかしい。見逃したか。いや、ローソンを見逃すはずがない。ストップしてスマホで現在位置を確認すると、沼津方面に向かっていた。逆だ。「国道1号は間違えようがない」と暗くなってもヘルメットライトは付けず、キューシートも見なかった。国道1号手前で一番左の車線が左折専用車線となり、信号が青だったので勢いよくそのまま何も考えず左折してしまった。右折なのにねぇ。


 前回の笹子200に続くミスコース。あ〜あ、約5キロ弱、20分程度のロスだ。


 引き返して南二日町ICまで戻ってくると、左手に見覚えのある「ノジマ」があった。1度だけだがこちら側から数年前に上ったときに休憩した所。ああ、この方向で間違いない。それにしてもPCがなかったら沼津まで行ってたな、きっと。


【PC4 251・0キロ ローソンニュー箱根店】午後7時30分(貯金3時間14分)


 最終PCで3時間半ほどある貯金が、3時間14分。ぎりぎり16時間台か。


 トマトジュースを飲み、トイレを済ませ、真っ暗な国道1号を上り始める。


 最初は傾斜も緩く、余裕を持って上ることができた。箱根峠まで14キロ。一気に上るつもりは全くなく、刻む作戦だ。さて、何キロごとに休もうか。3キロじゃ短いな。せめて5キロか、ということで5キロほど上ったところで最初の休憩。振り向くと三島の町の夜景が綺麗に見える。ここで歩道に座り込み、しばらく休憩。


箱根へ向かっての上り。遙かに三島の町の夜景
箱根へ向かっての上り。遙かに三島の町の夜景

満月かな?
満月かな?

 しかし、緩いと思っていた序盤で登坂車線が出てきた時は驚いた。上ったのが何年も前のことで、苦しかったことしか覚えておらず、コースについての記憶はまったくなかったのだ。


 その後も10キロ付近で休憩し、写真ストップは2度ほど。しかし、これだけ休んでいても、誰にも抜かれない。もしかして最後尾なのかと心配になった。結局、上りの終盤で何人かに抜かれ、最後尾ではないことが分かったが、最後尾に近づいていることは確かになった。


 上りの途中にバイパスができているという話をブリーフィングで聞いていた。信号があって、直進すればいいと言っていたのでここかな? 標識には「自転車は車の少ない旧道へ」とあったが、夜で車も少ないしバイパスへ直進した。


これがバイパスとの分岐点。直進でバイパス。右折で旧道らしい
これがバイパスとの分岐点。直進でバイパス。右折で旧道らしい

 ピーク前の数キロは再び登坂車線が現れ、きつい上りとなった。歯を食いしばって上っているのだが、あっさり抜かれちゃうとショックだなぁ。みんな速いね。


 ピーク手前の駐車場でトイレを済ませ、長袖インナーに着替えたりした後、標高846メートルの箱根峠に午後9時23分に到着。14キロの登坂に2時間近くかかっている。前回の登坂では足付きなしで上り切ったので足がつったが、今回は休憩をたっぷりとったので足は大丈夫だ。しかし、貯金を1時間ほど食いつぶし、ゴールは17時間台まで落ち込んだ。


箱根峠
箱根峠

 やっとラスボスをやっつけた。しかし、上りはこれで終わりではない。まだ湘南平が残っている。


 いや、その前に真っ暗な箱根旧街道の下りが待っている。ホントにスーパーなコースだよ。


 最初は1人で下っていたが、やがて前のライダーに追いつき、後ろからも3人に追いつかれ、結局5人でのダウンヒルとなった。スピードはそれほど出ていないのだが、誰も飛び出さない。先頭のライダーのゆっくりペースに合わせ、みんな慎重に下っている。ライトもこれだけいると明るいし、安心なこともあったのだろう。後方から車が来ないこともあって、5人がひとかたまりになって無事に三枚橋まで下った。「お疲れさまでした」「いやぁ、緊張しましたね」。信号待ちでほっとして思わず語り合った。何度も下っていてルートが分かるからまだいいが、初めてだったらこの急坂は下れないだろうね。


 ここからの平たん区間は、旧街道で一緒になったスタッフのMさんの鬼引きが始まった。すぐに1人がちぎれた。必死に付いていくが、ちぎれ気味になり信号ストップで追いつくことを何度か繰り返した後、つくことをあきらめた。巡航時速35キロじゃ無理無理。


 さて、いよいよ最後の湘南平。普段なら当然一気に上るところだが、さすがにその足は残っていなかった。ただ、直上りの途中で足付きすると漕ぎ出せなくなるので、直上りが終わってやや平たんになるところまで命懸けで頑張り、駐車場でひと休み。息を整え、再び漕ぎ出す。残りはそんなにきつくないのだが、頂上ゴールまでの1・6キロを17分ほどかかったようだ。いや、疲れた。


【ゴール 305・6キロ 湘南平】午後11時33分(貯金2時間27分)


 タイムは17時間33分。グロス平均時速は17・54キロ。走った距離はミスコース含め311・84キロ。


湘南平へゴール
湘南平へゴール

 天気に恵まれ、過酷といわれる西伊豆も気持ちよく走ることができた。もう少しスピードが速ければ「金目鯛」という看板に引かれて食事でもという気になるのだが、上りは亀の歩みなのそうもいかない。終わって見れば2時間以上の貯金があり、時間いっぱいを使えばいいのだが、トラブルがあった時のことを思うと少しでもゴールに近づいておきたい。それに、競争じゃないけど、やはり負けず嫌いなところがちょっぴりあるので、ね。


 それにしても伊豆1周の後の箱根はさすがにきつい。持病の腰痛が出なくて良かった。


 トップは何と12時間30分。15時間以内も3人いる。どうやったらそんな時間で帰れるのだろう。まるで別世界。


300キロ完走のメダル
300キロ完走のメダル

 さて300キロを完走。次は400キロか。ん? 【メディア戦略本部・石井政己】