医師で作家の鎌田實さん(67)が、日常生活のちょっとした工夫で健康になり、10歳若返るヒントを教えてくれます。

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 医学は進歩している。がん遺伝子と、がん抑制遺伝子があることがわかっている。アメリカの女優アンジェリーナ・ジョリーは、遺伝子検査で乳がんになる確率が高かったため、両側の乳房を切除した。

 遺伝子検査により、ある程度の予測が立つということは、悩みを増やす。A・ジョリーのように予防的に切除してしまうのか、こまめに検診して早期発見してから手術するのか。これは、それぞれの人生観で選択すればいいのではないかと思っている。

 信州大学の谷口俊一郎特任教授と対談したことがある。がん遺伝子があれば、必ずがんになるわけではない。がん遺伝子のDNAにメチル基がついていると、がん遺伝子が働かない状態になるという。

 しかし、加齢とともに、このメチル基がはがれやすくなる。メチル基がはがれないようにするためにはどうしたらいいか。谷口教授は「運動することでメチル基がはがれることを防ぐことがわかった」と言う。

 肥満もうつも、少しだけ遺伝的傾向があるといわれている。だが、メチル基がはがれなければ、遺伝子は働かない。

 体質だから、遺伝だからとあきらめずに、運動することでがんや肥満、うつなどの遺伝子を働かない状態にすることができる。

 信州大学のほかのグループでは、効果的な運動としてインターバル速歩をすすめている。3分速足で歩き、3分通常の速さで歩くというのを交互に繰り返す。この研究は世界的にも高く評価されている。

 通勤途中、ぜひ、インターバル速歩をやってみてはどうか。寿命は遺伝子だけでなく、日ごろの生活習慣がつくるのである。

 ◆鎌田實(かまた・みのる)1948年(昭23)6月28日、東京生まれ。東京医科歯科大医学部卒業後、長野県茅野市にある諏訪中央病院の医師になる(現在は名誉院長)。チェルノブイリ原発事故の患者支援、イラク難民支援を続け、東日本大震災後の被災地支援にも力を入れている。著書「がんばらない」など多数。