糖尿病が疑われる成人の推計が、1000万人を突破しました。厚労省が実施した「16年国民健康・栄養調査」によると前回の12年調査より50万人増え、調査開始以来最多となりました。

 糖尿病のタイプは大別して2つ。まず「1型」。これは生活習慣が原因ではなく、膵臓(すいぞう)のうちインスリンを作る細胞が何らかの原因で破壊されてしまうことで起こるものです。発症年齢は主に25歳以下、体形はやせ形に多い。急激に発症し、悪化も早い。インスリン注射で治療を行います。

 もう1つの「2型」が、いわゆる生活習慣病です。食べ過ぎや太りすぎによるケースが多い。年齢は中高年に多く傾向が見られ、太った人が目立ちます。緩やかに発病し、進行もゆっくりです。「2型」が全体の95%を占めます。

 2型糖尿病の予防は、何より太りすぎないこと。そのために、「食事・運動療法」で血糖値の上昇を抑えることです。たとえばご飯や、麺類を、冷やして食べると、消化吸収率が50%もダウンします! つまり炭水化物が冷えると、レジスタントスターチ(難消化性でんぷん)というものになります。食物繊維と同じ働きをする一方、胃や小腸で消化されにくいため、同じカロリー摂取でも、冷たいご飯は温かいご飯より消化吸収率が50%も低い結果が出ています。

 また、夜寝る前の2~3時間が最も太りやすい魔の時間帯です。同じカロリー摂取量でも、日中に比べて深夜は、30倍も脂肪をため込みやすいという研究結果もあります。

 次に運動療法ですが、激しい運動でやせようとしても、なかなか継続できずに難しいことが多いのです。そこで、私がお勧めするのが「ニート」です。と、いっても皆さんが考えているニートと違い、「Non Exercise Activity Thermogenesis(非運動性活動熱産生)」の頭文字をとったもの。運動以外の生活のなかで使われるエネルギーのことです。「家事などで歩きまわる、街では階段を使う、電車では座らずに立つ」など、まめに体を動かして消費されるエネルギーは、1日の消費量のうち25~30%にもなります。

 1日の消費エネルギーの内訳は、60%が基礎代謝(呼吸や体温調節などの生命維持のために消費されるエネルギー)、10%が食事を摂取することで消費されるエネルギー、残りの30%が身体活動になります。この30%のうち、運動で消費されるのはわずか0・5%。つまり25~30%は「NEAT」で消費されているのです。

 ◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビではコメンテーターのほか、「ドクターX~外科医・大門未知子~」(テレビ朝日系)など人気番組の医療監修も数多く務める。著書は「今すぐ『それ』をやめなさい!」(すばる舎)「ダイエットはオーダーメイドしなさい!」(幻冬舎)「ねぎを首に巻くと風邪が治るか?」(角川SSC新書)など。気分転換は週2回のヨガ。