プレーバック日刊スポーツ! 過去の3月20日付紙面を振り返ります。2015年の1面(東京版)は「ハリルホジッチ新監督、新生日本代表メンバー発表」でした。

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 注目の骨格がみえてきた。日本代表のバヒド・ハリルホジッチ新監督(62)が19日、東京・文京区のJFAハウスで、新生日本代表メンバーを発表した。6月に始まる18年W杯ロシア大会アジア2次予選を見据え、27日チュニジア戦(大分)、31日ウズベキスタン戦(東京)のメンバーで、バックアップ12人を加えた計43人を発表した。しかし、国際Aマッチ152試合のG大阪MF遠藤保仁(35)は、選考から外した。日本代表の心臓といわれたベテランボランチを外すことが、改革の第1歩となった。

 日本で行う初の代表選出の会見で、ハリルホジッチ監督は遠藤への決別を宣言した。選ぶことも大切、そして外すことも重要な決断だった。

 ハリルホジッチ監督 遠藤は日本のレベルを上げてくれた。でもリストには入ってない。私はW杯ロシア大会の準備のために日本に来ている。メンバーは、今までのリストを中心に、さらに自分の考えを加えて作成している。遠藤はこれまで、日本のために貢献してくれた。敬意を表したい。

 W杯本大会は3年後。その時、遠藤は38歳になっている。

 日本代表の心臓と呼ばれ、ここ数年の日本代表には欠かせないボランチだった。衝撃が走る会場で質問が飛ぶ。「今後、遠藤は一切呼ばないのか?」。答えは端的だった。「ものすごい大事な試合で必要なら呼ぶ可能性はある。遠藤は仲間への信頼も強いし、自分の役割も知っている」。選手である以上、代表選出の可能性は残したが、基本は選出しない方針。MF陣に負傷者が続出し、チーム崩壊の危機に陥らない限り、遠藤の国際Aマッチ153試合目の出場は、厳しくなった。

 遠藤はオシム時代から、鋭い読みと正確なミドルシュート、広い視野を武器に君臨してきた。一時期に比べて運動量は落ちたが、洗練された戦術眼は健在。国際Aマッチは、日本記録を更新中、その力量はいまだ日本代表でも揺るぎない。

 しかし、球際の激しさや豊富な運動量を求める新監督のコンセプトははっきりしている。個の能力より、組織力で戦う。会見でも「スターではなく、一番は、グループで勝つことです。攻撃の時は11人で攻撃し、守る時も11人で守る」とチームの基本理念を説明した。無尽蔵に走り、ヨーロッパやアフリカ、南米の強国の選手ともボール際でがんがん戦えるボランチが必要だ。W杯ブラジル大会でもろさを露呈し、アジア杯でも敗れた日本は、新陳代謝しか生き残る道はない。

 「現役を続ける限り、代表を目指す」。遠藤の代表に込める日頃の思いだ。不祥事に伴う代表監督の交代劇の中、思わぬ形で「代表引退」を余儀なくされた。日本協会は遠藤の功績を評価し、発表前に電話連絡して、ハリルホジッチ監督の意向を伝えていた。今後の代表招集が完全消滅したわけではないが、新生ジャパンは遠藤抜きで進んでいく。大黒柱を外す時の勇気とエネルギーは想像以上のものがある。ハリルホジッチ監督の強い決意を示す異例の船出となった。

※記録、年齢など表記は当時のもの