女子高生が日本一!! アマチュアの畑岡奈紗(17=茨城・ルネサンス高3年)が金字塔を打ち立てた。5バーディー、2ボギーの68で回り、通算4アンダーで国内メジャー史上初のアマチュアV。17歳263日での優勝は、平瀬真由美の20歳27日を大幅に更新する国内メジャー最年少V。来年からの米ツアー参戦を目指す逸材が、全米女子オープン制覇と東京五輪金メダルという目標へ1歩を踏み出した。

 優勝の瞬間、畑岡はプレーオフに備えてパッティンググリーンにいた。涙があふれる。「信じられない。すごくうれしい」。世界ランク3位の田仁智や元世界NO・1の申ジエ(ともに韓国)ら強豪をねじ伏せ、日本女子ゴルフ最高峰の舞台で頂点に立った。

 16番で3パットボギー。前日は16番から3連続ボギーだった。「なるようにしかならない」。最難関の17番で腹をくくった。残り210ヤード、池越えの第2打は4番ウッドでグリーンを捉えた。トップを争う堀が第2打を池の手前に刻んだのとは対照的な攻めでパーセーブ。18番は高弾道のアイアンで果敢にピンを狙い、奥4メートルにつけた。難しい下りのフックラインを沈めてガッツポーズ。「17、18は攻められた」。優勝に値する会心の2ホールだった。

 母博美さん(46)の職場の影響で始めたゴルフ。高校時代に走り高跳びで県大会2位になった父仁一さん(51)は娘にも陸上競技をさせたくて、中学では陸上部に入れた。家族旅行で韓国を訪れた11年8月、世界陸上を観戦。「陸上の素晴らしさに目覚めてほしいんでボルトの走りを見せればと思った」。ところが、100メートル決勝でボルトがフライング失格。「せっかくの計画がおじゃんでした。結局、娘は女親の流れに乗っていくもんなんですかね」と笑う。

 原点は悔しさだ。14年の日本ジュニア最終日、勝みなみ(鹿児島高)に6打差から逆転負け。号泣する娘のかたわらで、父は勝の優勝インタビューに耳を澄ませた。「トップの選手、誰でしたかね、とにかく上だけを…」。目の前の一打にだけ集中していた勝は、トップが畑岡であることも覚えていなかった。圧倒的な差を感じさせられた瞬間だった。畑岡も「あの経験は大きかった」と振り返る。

 今季米ツアーに出場した時のことを、宮里美香のトレーナー、工藤健正氏は「米国でもショットは目立っていた」と証言する。小学生の時、憧れの宮里藍にもらったサインが宝物という17歳。「目標は全米女子オープン優勝と東京五輪の金メダルです」。世界と戦える超新星が誕生した。【亀山泰宏】

 <畑岡奈紗(はたおか・なさ)アラカルト>

 ◆生まれ 1999年(平11)1月13日、茨城・笠間市。158センチ、62キロ。

 ◆ゴルフ 茨城・宍戸ヒルズCCで事務として働く母博美さんの影響で11歳から。キャディーは博美さん。中嶋常幸が主宰する「トミー・アカデミー」の1期生で、15、16年世界ジュニア2連覇。

 ◆複数競技 小学校時代は野球チームで二塁手、中学では陸上部で200メートルが専門。巨人坂本勇人の大ファン。

 ◆石 昨年アマ初のデビュー戦完全Vに迫った樋口久子Pontaレディースで、ショッピングモールで買ったパワーストーン(3000円)のひもが切れてイーグル。今も新しく買ったものを身につける。

 ◆今回がツアー4試合目 デビュー戦「樋口-」の最終順位は7位。出場試合はすべて予選通過。

 ◆名前 米航空宇宙局(NASA)と同じ読み。父仁一さんが子どもの頃にアポロの月面着陸を見て「人類初の偉業を成し遂げ、世界に羽ばたく子になってほしいと思った」。

 ▼女子ツアーのアマ優勝 畑岡が5人目。73年トヨトミ・レディースの清元登子、03年ミヤギテレビ杯ダンロップ女子の宮里藍、12年サントリー・レディースの金孝周(韓国)、14年KKT杯バンテリン・レディースの勝みなみに続く。