舞台「放浪記」や「ラ・マンチャの男」で存在感あふれる名脇役ぶりを見せた俳優小鹿番さん(こじか・ばん、本名・小鹿敦)が04年4月29日午前1時15分、急性腎不全のため都内の病院で急死した。71歳。
小鹿さんは、森光子主演の「放浪記」で、61年の初演から菊田一夫役を演じ続けた。今年3月の名古屋・中日劇場公演で通算上演1731回となったが、中盤から「胸のあたりが痛い」と訴え、体もだるそうだった。公演後の4月上旬、検査のため病院へ行ったが、東宝の臼杵吉春プロデューサーは「奥さまの話では『通院するのがしんどいので入院して検査をしている』というので心配していた」と話した。初期の検査で肝臓に陰が見られ、その治療中に腎不全を起こしたという。
東宝重役で劇作家の故菊田一夫さんに仕込まれた小鹿さんが、最初に名を上げたのが菊田役。「放浪記」以外にも2作品で演じた。丸メガネ、チョビひげでひょこひょこ歩くそっくりぶりは、菊田さんの死後、晶子夫人が「主人に会いたくなったら芸術座に来ます」と言ったほど。もう1つの当たり役「ラ・マンチャ−」の軽妙なサンチョ・パンサやNHKテレビ小説「虹」の気さくな魚屋の主人など、人柄の良い小鹿さんそのままの役柄だった。
脇役としての地位が固まった74年「もう二枚目みたいな敦という名は似合わない」と、「子鹿のバンビ」から付いたニックネーム「バンちゃん」をそのまま芸名にした。鉄道ストの時、大宮市の自宅から東京・有楽町の芸術座まで三十数キロを自転車で通い周囲をびっくりさせたこともあった。葬儀・告別式は1日午前11時から東京都板橋区舟渡4の15の1、戸田葬祭場で。喪主は妻有代(ともよ)さん。
30日に東京・戸田葬祭場で営まれた通夜には、森光子(83)赤木春恵(80)北大路欣也(61)ら約250人が参列した。「放浪記」で43年間共演した森は涙で会見。「3月の千秋楽まで一緒に仕事をさせてもらって体調が悪そうなところは見えなかった。お肉も一緒に食べていたのに」と言葉にならなかった。さらに「43年一緒にやったのに、これからどうしていいのか分からない。悔しいのひと言です」。お別れの色紙には「さよならは言いません。ありがとう」と記した。
写真=通夜に駆けつけた森光子は涙を浮かべ会見に応じた