◇1988年ソウル大会柔道男子95キロ超級準決勝(10月1日・奨忠体育館) 斉藤仁(日本) 優勢 趙容徹(韓国)

 日本柔道の最後のトリデになったのは、最終日に登場した斉藤だった。山本洋祐、岡田弘隆ら現役世界王者たちが次々と敗れ、金メダル0で迎えた最終日。斉藤は痛めた右足で勝ち進んだ。準決勝の相手は地元韓国の趙。85年世界選手権で反則ギリギリの脇固めにあい、ケガをさせられた因縁の相手との試合は「事実上の決勝」とも見られていた。

 ケガで技がかけられない斉藤は、それでも前に出続けた。両者ポイントがないまま試合終盤、待ての合図で試合が止まった時、斉藤はテレビ解説席の山下泰裕に目で「勝ってますか?」と尋ねた。山下が大きくうなずいた通り、直後に趙の指導で斉藤が勝利。決勝でもストール(東ドイツ)を破り、2大会連続の金メダルを獲得した。 (2014年9月3日東京本社版掲載)