<宇宙飛行士 若田光一>

昨年11月、ロシアの宇宙船ソユーズ打ち上げの時、聖火を持って行きました。国際宇宙ステーション(ISS)に到着後、ロシアの宇宙飛行士が船外で聖火リレーをした後、日本の実験棟「きぼう」から船内でのリレーが始まったんです。

 五輪は世界の人たちが一堂に会してスポーツを通して親睦を深め合うすばらしい場ですよね。ISSも同じです。いろんな国が技術を持ち寄って一緒に仕事をして、そこから生まれる成果を各国で共有して、暮らしを豊かにしていく。人類を結びつける営みとして、五輪とISSというのは近いものがある。聖火リレーができて光栄でした。

 ソチ五輪は宇宙で見た初めての五輪でしたから一番印象的です。仕事があるので中継は見られませんが、収録映像をインターネットを通じて見ました。羽生結弦選手の金メダル、浅田真央選手の涙を見た時は、日本人で良かったなと思う瞬間でした。彼らが頑張っている姿を見て、私も頑張らないと、と思いました。

 2020年、私は57歳。それまでに(宇宙に)飛ぶことはないと思います(笑い)。ただ気持ちは若いんで、宇宙飛行士の資質を保ちながら現役を続け、機会をうかがいたい。そして仲間の宇宙飛行士の支援をしていきたいですね。

 東京五輪では世界中の人々に日本のすばらしさを満喫してもらいたいです。宇宙開発の分野でも日本に対する信頼感が高い。きちんと仕事をしてくれる国と見られています。「きぼう」も09年に完成してから壊れずにきちんと動いている。ISSへ物資を届ける補給機「こうのとり」も定時出発で物を届けてくれる。東京五輪でも日本のすばらしい文化、習慣を紹介できればいいですね。

 20年は宇宙開発でもマイルストーンとなるイベントが予定されています。本年度中に打ち上げられる宇宙探査機「はやぶさ2」が20年に帰って来る予定です。H2A、H2Bに続く、有人ロケットにもつながる新型基幹ロケットも20年に初飛行する予定です。それがまさに東京五輪と重なることが、象徴的ですよね。私としては、東京五輪のすぐ後にでも、日本の有人宇宙ロケットができればいいなと思っています。(取材・構成=三須一紀)(2014年8月13日東京本社版掲載)

【注】年齢、記録などは本紙掲載時。