<日本自転車競技連盟副会長 JKA特別顧問 日刊スポーツ評論家 中野浩一(58)>

 胸がわくわくした毎日だったのをよく覚えている。小学校3年生だった。東京五輪のために購入した、と思われるカラーテレビに映し出された日本選手の活躍に胸が躍った。子供以上に大人たちも興奮していた。「日の丸を背負ってオリンピックの舞台で活躍したい」。将来の夢を「プロ野球選手」と書いた多くの子供たちがあの時を境に五輪へ傾いた。僕もそうだった。

 77年(昭52)に自転車競技の世界選手権のプロスクラッチ(現スプリント)で日本人初の金メダルを獲得して86年まで10連覇した。自転車競技が発祥した欧州で同競技の人気は絶大だ。その世界の頂点に立ち続けたことが、柔道と並ぶ日本で生まれた五輪種目「ケイリン」の誕生に微力ながらも貢献できたのかな、と思っている。6年後も、あの時の感動や興奮を今の世代に伝えたい。自転車競技だけではなくあらゆる競技種目の強化、選手育成を20年へ照準を合わせた取り組みが急務だ。

 自転車の普及や啓発活動は世界中から訪れる人たちにエコ・ジャパンをアピールする絶好のチャンスだ。エコロジーの代表として自転車は世界中で活用されている。海外遠征先のオランダやドイツでは都市部を中心に簡単にレンタル利用できるシェアサイクルのシステムが定着している。

 だが、日本では同様のシステム採用が先進国の中では遅れている。街には放置自転車があふれ、ルールやマナーを守らない利用者が増え、死亡事故やアクシデントが絶えない。自転車の危険な走行にヒヤリとされた方は少なくないだろう。法整備も含めた自転車行政の体制作りが急がれる。

 世界中から五輪観戦、観光に訪れる海外の人たちに車だけに頼らないエコな交通手段を構築。日本流のきめ細かい自転車ルールやマナーの提案をすることこそが「おもてなし」であると思う。自転車のおかげで今の自分がある。自転車を通じて社会貢献ができればと願ってきた。環境五輪を世界に発信したい。そのために我々の自転車競技界、プロサイクリストの集団である競輪界がお手伝いできることはたくさんある。あの時と同じ感動と興奮を全競技で伝えると同時に東京という世界有数の大都市で開催されるエコ五輪が、未来への道しるべとなるように力を尽くしたいと思う。

(2014年10月08日東京本社版掲載)

【注】年齢、記録などは本紙掲載時。