やはり「旬」を迎えていたんだ。そう感じる井上のバッティングだった。
先のDeNAとの3連戦。阪神監督の岡田彰布は得点能力が一向に上がらぬ打線に対し、手を打った。それがプロ5年目の井上を2軍から上げ、そして3戦とも先発で起用した。
過去4年、資質はあると評価されながらも、1軍では結果を出すことはできなかった。典型的な「2軍の大砲」。そんな感じで過ごしてきた。それが今回、また巡ってきたチャンス。ここをモノにできなければ…。ギリギリの状況で、井上は答えを出した。
まだ3試合、楽観的にとらえるのは早計だと思うが、ベンチに間違いなく「使っていきたい」と思わせるインパクトを与えた。
彼の打撃に変化を与えたもの。それが「すり足の打法」だ。右打者なら左足を上げてタイミングを取り、反動をつけて打ちにいくのがスタンダードだが、井上は左足を上げずに、後足状態で打ちにいく。これを身につけたことで、打席でのブレが減り、どの球種にも対応できるようになっている。
すり足で記憶に残るのがオリックスのT-岡田である。伸び悩んでいたT-岡田に助言したのがオリックスの監督に就任した岡田彰布だった。コンタクト率を上げるため、すり足にして、ズレを解消する打ち方にトライさせた。懸念するのは足を上げなくなったことで、打球の飛距離が落ちるのでは…という点だった。すると岡田はこう説いている。
「まずボールにしっかりとコンタクトすることが前提。それができればTの持つパワーがあれば、十分ホームランにできる」。T-岡田は信じて向き合った。これによって得た結果はホームラン王。T-岡田の人生が劇的に変化したのである。
この経験があるから、岡田は井上の変化をT-岡田とだぶらせている。タイミングをうまく取れるようになり、対応可能な打席が続いた。そのうちプロ初本塁打も…。そんな予感を抱かせる。
岡田が井上を高く評価したのが12日の試合だった。相手先発の大貫の出来がよく、才木との投手戦の中、たった1度訪れたチャンスで井上はうまく後ろにつないだ。中野のタイムリーを呼ぶつなぎのヒット。それはこれまでとは違う姿だった。
この試合、井上に1番を打たせた。3番がブレーキになる打順だったこともあり、近本をそこにあて、1番に井上を据える岡田ならではの発想。これがハマったのだが、果たしてこの先、井上の打順はどう考えるのか。14日からの中日戦。井上を起用していくのは間違いない。状態のいい時、どんどん起用していくのが常道で、また1番で使うのか?
やはり近本は1番でこそ…。1番近本、2番中野の並びがベストスタイルだし、3番近本は1試合限定(すでに1度あったが)では、と想像する。そうなれば「3番井上」は十分あるとみる。この3試合、どの打順でも結果を出した。この勢いを3番で続ける。岡田のいう「3番問題」のテストケースになる。さらにいえば井上のレギュラーへの道につながる。佐藤輝でも森下でもなく、現状は井上に焦点が当たる。これをつかむかどうか。「すり足井上」には楽しみしかない。(敬称略)【内匠宏幸】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「岡田の野球よ」)




