<日本サッカー協会技術委員 霜田正浩氏(49)>

 私は、日本サッカー協会の技術委員会メンバーとして、12年ロンドン、16年リオデジャネイロ両五輪にかかわってきた。成績の大きな要素の1つとなるメンバー編成については、実は、国際サッカー連盟(FIFA)の決定が鍵を握っている。ロンドンでは自由に選手を招集できたが、リオではそうではなかった。

 リオでは五輪直前になって五輪代表チームにFW久保(ヤングボーイズ)を呼ぶことができなくなった。日本協会の交渉能力を問われるとの声が多かったが、ルール上、クラブが拒めば招集はできない。選手が強く望んでいても協会に拘束力はない。だから「1クラブ3人までは無条件で五輪に送り出す」と、国内でのルールを作ったJリーグには感謝の気持ちが強い。

 これまで海外でプレーする選手を招集する際は、技術委員長名でクラブに招集レターを出し、交渉してきた。東京五輪に向けて、今後は協会の会長名で招集レターを出し、それでもクラブが難色を示した場合には、協会会長が相手国の協会会長に協力を要請するなど、特段の対策を講じることも考えないといけない。

 今、東京五輪での注目選手として15歳の東京ユースFW久保が挙がっているが、20年に彼がJリーグにとどまっているかは分からない。海外に移籍した場合は、現行のルールでは東京五輪出場は難しい。あのブラジルでさえ、自国開催の五輪にFWネイマールを招集するために所属のバルセロナと交渉し、五輪の約2カ月前に行われた南米選手権に招集しなかった。それほど五輪に選手を招集するのは難しい。

 FIFAのルールが変わらない限り、4年後、日本はJリーグの選手だけで戦うことを基本方針にしないといけない。今後、多くの若手が海外に挑戦するだろうが、あくまで海外組はプラスアルファと考えた方がいいだろう。この点については、広く一般の方にも知っておいていただきたい。

 東京五輪では国と協会、クラブ、選手やファンが、本気で金メダルを取りたいと思うのかがポイントだろう。選手は本人の努力、協会やクラブのバックアップだけで育つものではない。他競技にも共通することだと思うが、最も大事なのはファンの関心度。Jユースや高校サッカー、Jリーグなどに興味を持ち、実際にスタジアムに足を運んでいただけたらと思う。

(2016年11月2日東京本社版掲載)

【注】年齢、記録などは本紙掲載時。