ドジャース大谷翔平投手(29)の誕生で、カリフォルニアを訪れる日本人がますます増える。“最高のプレイグラウンド”を全世界にPRするカリフォルニア観光局のプレスツアーに日刊スポーツの野球記者が参加。市販ガイドブックにはない魅力を探した。

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2階に幽霊ジョージが住み着くビッグ・ベアー・レイクのレストラン「アンカレジ」
2階に幽霊ジョージが住み着くビッグ・ベアー・レイクのレストラン「アンカレジ」

「2階にゴーストがいるわよ」と前置きされて上る階段は、笑顔で平静を気取り、足取りは重い。

ロサンゼルスから2時間半ほど。海抜2000メートルほどのビッグ・ベアー・レイクにあるレストラン「キャプテン・アンカレジ」は西部劇の俳優が戦後に作ったというだけあり、薄暗い店内に良きムードが漂う。いかにもアメリカっぽいステーキを食べると、デザートの時間だ。陽気な女性店主パトリシア・スクリブンさんがやって来て、店の物語を語り出す。

全ては理解できないけれど、どうやら怖い話。ただ、説明書きも準備されているほどの“鉄板ネタ”のようだ。このレストランでかつて会計士をしていたジョージは自身のミスからトラブルに巻き込まれ、謎の死を遂げてしまった。

ちょっとしたミステリーも、説明書きには「ジョージはここに居座ることを決めた」と何やら愉快に表現されている。客を脅かすわけではなく「ろうそくの火を勝手に消したり、2階で大きな音で歩いたり、ボトルも3回割っているのよ」とのこと。コーディネーターの小笠原聡さん(68)は「アメリカ人は幽霊話が大好きなんだ」と笑う。2階に上がってハイチーズ。震え上がる怪談ではなかったけれど、外に出ればけっこう震える。

3日前にビーチヨガをしたばかりなのに、ビッグ・ベアー・レイクでは雪で遊び、雪山を歩く。季節が行ったり来たりする。

極寒の雪山でTシャツ姿になるオフロード運転手のデシ・ハウアーさん
極寒の雪山でTシャツ姿になるオフロード運転手のデシ・ハウアーさん

熱い体験もあった。雪山のオフロードを小型4輪駆動車で疾走した。運転手兼ガイドのデシ・ハウアーさんは、気温2度とか3度くらいなのにテンションが高い。異国の地で重ね合わせた姿は里崎智也氏(47=日刊スポーツ評論家)だ。

それなりに交通量が多い街道を、音楽全開で山へ向かう。近くの席に座った教員女性もノリノリだ。亡くなったご主人はワタナベという日本人男性らしい。知っている日本語は「ヤカマシイ!」だそう。こちらもテンションが高い。

山に入るとオフロードが本格化し、小型4輪駆動車は平気で沼のような水たまりに突っ込む。泥しぶきが上がり、5分後にはもう誰も泥など気にしていない。

里崎氏似のハウアーさんが何度か運転席を降り、泥はねが目立ち始めた私たちに解説を行う。実はこのエリア、ゴールドラッシュとも縁の深い土地だそう。ジョージの幽霊どころじゃないほどゾクッとする話も、ハウアーさんは熱っぽく披露していた。

熱を帯びまくったか、ハウアーさん、寒がる女性に上着を貸した。おそらく氷点下であろう雪原をTシャツ1枚。3月なのに「AUGUST!」。スケールが違う。4駆は豪快に揺れながら雪の森を抜け、山岳地帯に。いよいよ凍える寒さになってきて、さて私は無事に帰れるのかと心配になる。吹き飛ばすような絶景が待っていた。【金子真仁】(つづく)