史上最高レベルの戦いだった。世界選手権2連覇のエフゲニア・メドベージェワ(18、OAR=ロシアからの五輪選手)と15歳の新星アリーナ・ザギトワ(OAR)の頂上決戦をザギトワが制し、今大会初のOAR金メダリストとなった。フリーは同点の156・65点で、SP首位のザギトワが逃げ切った。勝負を分けた要因は、基礎点が1・1倍となる演技後半のジャンプ構成だった。

 滑り終えると、女王メドベージェワの感情があふれ出した。両手で顔を覆い、瞳を潤ませる。「こんなことは今までなかった。この気持ちは言葉に出来ない」。最終滑走。五輪のために温めてきた「アンナ・カレーニナ」の悲しい物語を表情豊かに演じる。技術と、高い演技力。女王の名にふさわしい完璧な演技を見せた。あとはジャッジを待つだけ-。キスアンドクライのソファに腰掛けながら「2位」の表示を確認すると、再び涙があふれた。

 勝ったのは、同門の後輩ザギトワだった。今季シニアに上がったばかりの15歳は、スケートがうまくなりたい一心で、山岳部のイジェフスクから1200キロ離れたモスクワへ。エリート養成所「サンボ70」で、鬼コーチで知られるトゥトベリーゼの指導をうける。先輩メドベージェワの背中を追った。彼女もまた、経験したことのない緊張に襲われていた。「ミスは許されない」。両手を震わせながら、スタート位置に立った。

 ザギトワは後半から始まるジャンプの最初でいきなり予定が狂った。3回転ルッツ-3回転ループの連続技が、1つ目のジャンプが乱れて単発に。それでも、心は折れなかった。続く技を次々と決め、もう1度訪れた3回転ルッツにとっさに同ループをつけ、ミスをカバーした。「体は、練習で何度もやってきたことを覚えていた」。積み重ねてきた自信が、金メダルにつながった。

 2人のフリーは国際大会では珍しい同点だった。技術点はザギトワ、表現力を表す演技構成点はメドベージェワがトップだった。勝負の鍵は得点が1・1倍になる後半のジャンプ。メドベージェワは連続技を冒頭に跳んだが、後半にそれを跳んでいれば得点を上積みできたかもしれない。だが「それは、たられば。私には分かりません」と笑った。昨年11月に右中足骨骨折を負い、約2カ月練習を積めなかったが、それも「今日の結果とは関係ない」と言い訳にしなかった。

 ザギトワは、今季のSP、フリーですべてのジャンプを後半に組み込んでいる。それが高い技術点と勝利につながった。「金メダルはまだ信じられない」と、幼さの残る笑顔をみせた。【高場泉穂】

 ◆同点 女子フリーの得点は156・65点で2人が並んだが、1位メドベージェワ、2位ザギトワとなった。同点の場合、フリーは表現を評価する演技構成点の得点で順位を決めるためで、技術点を採用するショートプログラムと異なる。