<高校サッカー:鹿児島城西6-2滝川二>◇5日◇準々決勝◇三ツ沢

 史上最強ストライカーの証明だ。鹿児島城西(鹿児島)FW大迫勇也(3年)が、大会史上初の4試合連続2得点の偉業を成し遂げた。滝川二(兵庫)戦の前半13分にチーム2点目を決めると、同24分には技ありのループシュートで快挙を達成。通算8得点として、石黒智久(99年度富山一)平山相太(03年度国見)の大会最多得点記録9にもあと1に迫った。チームも6-2で大勝して初のベスト4進出。大会前にJクラブ争奪戦の末、J1鹿島入りが内定した逸材は、10日の前橋育英(群馬)との準決勝(埼玉スタジアム)で新たな記録に挑む。

 うわさ以上の怪物だった。前人未到の大記録を、大迫勇はたった24分間で達成した。1点目は1-0で迎えた前半13分だった。左から鋭いドリブルで1人抜くと、右への切り返しでもう1人かわす。ゴールまで約20メートル。右足で左すみに強烈なシュートを突き刺した。同24分には誘い出したGKの頭の上を越える技ありのループシュートで2点目。4試合連続2得点の偉業は、拍子抜けするほどあっさりと歴史に刻まれた。

 「相手の寄せが甘かったから」。大迫勇は平然と得点シーンを振り返った。しかし、対峙(たいじ)した滝川二のDF中西隆は必死だった。「2人がかりで止めようと思ったのに…。エグいっす。横に行っても手ではじかれる。懐が深いし、FWの素質を全部持っている」。2試合連続無失点の守備を崩された敵将の栫(かこい)監督は「強烈でした。短い(距離の)スピードが相当速い。(DFと)並んだときにスッと出てしまう。日本の宝です。あの子を応援しないといけない」とただ絶賛。1人だけ次元が違っていた。

 182センチの長身に、高い技術、常に冷静に対処できる強い心…。その高い潜在能力に「10年に1人の衝撃」という声もある。鹿島の椎本スカウト担当部長は「これだけ騒がれても結果を出すのがすごい。ポストプレー、シュート、パス…。何でもできる柳沢(現京都)に似ている。(J1でも)試合に出るチャンスはある」と話す。スタンドで観戦した川崎F関塚監督は「パスの種類が多く、良い選手」と早くも警戒していた。

 昨年9月の全日本ユースも今回と同じ4戦4発だったが、準々決勝で優勝した浦和ユースに無得点に抑えられた。その後、小久保監督に「周りが点を取れば、お前のマークも緩んで、また点が取れるようになる」とアドバイスされて、周囲を使うプレーを意識した。今大会は計8得点記録の陰に隠れたが、10アシストを記録。椎本部長も「この1年で成長したのは、周りを使えるようになったこと」と分析した。

 試合では決して大口をたたくことはないが、目指す場所はとてつもなく高い。目標はフランス代表FWアンリ。「ドリブル、パス、シュート、何でもできる選手になりたい」。昨年12月の鹿島入団発表会見では「10年W杯も目指したい」とも話した。椎本部長も「マークをはがす運動量がもっと必要。あとは頭も点を取ってほしい」と将来のエース候補として「課題」を与えている。

 通算8得点で大会通算得点記録にもあと1点に迫ったが「記録は気にしない。これからは点が決められない苦しい試合もあるはず。みんなで点を取って、優勝できればいい」。大迫勇にとって、記録はあくまで通過点にすぎない。【佐藤千晶】