浦和のミハイロ・ペトロビッチ監督(57)が11日の定例会見で、リーグ戦の日程について「提言」をした。

 9日閉幕の東アジア杯の期間中、日本代表のハリルホジッチ監督は終始、大会直前に準備期間が取れなかったことへの不満を表明。Jリーグの日程の組み方を考慮してほしいと要望した。これを受けて、ペトロビッチ監督は「代表チーム、そして監督、スタッフにとっては、いい日程ではないのは確か」と切り出した。

 ペトロビッチ監督 一方で我々クラブ側としても、こういった日程は非常に難しい状況を生む。代表組は昨日(10日)に日本に帰ってきた。そして今日(11日)にアウェーに移動し、明日にはもう試合になる。そういう日程では、彼ら代表組を起用できるかは、非常に微妙なところになるそれは誰にでも分かるところでしょう。代表側も日程に不満を持っているというなら、つまり、どちらもこの日程でいいと思っていないということになる。ならば、どちらかが妥協するしかない。

 我々にとっても難しい状況なのだ-。はっきりとした口調で、ペトロビッチ監督はJリーグ側として感じる最大の問題点として「夏場の連戦」を挙げた。代表組が帰国から中1日でリーグ戦に臨まざるを得ないのは、今週に12日水曜日、16日日曜日と2試合が組まれているためだ。

 ペトロビッチ監督 特にこの夏場、暑い時期に連戦をするのは、選手にとって非常に負担。チームとしても、しっかり準備をして次の試合に臨むことは非常に難しい。だから東アジア杯中など、代表の活動期間中の2週間のリーグ戦中断をやめて、1週間に1度のペースにする。「どちらかの妥協」として、そういう形にするのも1つです。

 逆立ちをしても、1年には52週しかない。一方でリーグ戦の試合数も決まっている。ただ単に「日程を何とかしろ」と言う声は多かったが、それではどうにもならない。そんな中、ペトロビッチ監督は「リーグ戦を代表期間中に行うしかないのでは」と現実を見据えて提案した。そして「すでに大事なカップ戦を、代表抜きで戦っているではないか」と言う。

 ペトロビッチ監督 ナビスコ杯というのは大事な大会の1つ。しかし準々決勝、準決勝は国際マッチデーに重なり、日本代表が選出されたクラブは、主力を欠いて戦うことを余儀なくされる。世界でもまれな形だ。しかし私たちとしては、代表組がいなければいないなりに、チームをつくって戦う。リーグ戦もまたしかりだ。この夏の暑い時期に連戦を組むよりは、はるかにいい。1週間のインターバルが確保されさえすれば、代表組が不在の試合が生まれても構わないと思う。

 クラブ、リーグの主たる財源であるリーグ戦を、集客が期待できる夏休みに多く設けたいという考えも理解している。一方で、その日程は集客面でも逆効果ではないかと、ペトロビッチ監督はみている。

 ペトロビッチ監督 リーグ戦の予定を詰め込んで、水曜、週末という連戦が続くなら、サポーターのみなさんにとっては、その週の中でどれだけ観戦費用を出せるかという経済的な問題も出てくると思う。1週間に1試合の方が、みなさん見に来やすいはず。水曜には仕事もあるでしょうし。そういったことを考えても、1週間間隔を保ってリーグ戦をするのは大事だと思います。

 日本代表が活躍すれば、Jリーグにも波及効果はある。そういう観点からも「しっかりと代表の活動期間を取る」「代表期間にリーグ戦を開催しないという原則にこだわらない」という改革案を、強く推す。

 ペトロビッチ監督 東アジア杯で優勝していれば、次のうちのホームゲーム湘南戦では、1万人くらい多くお客さんが増えたのではないかと考えている。なぜならうちには、西川や槙野、武藤や興梠と、東アジア杯で出場機会が多かった選手がそろっている。「そういう選手をみたい」と思ってくださるお客さんは、きっと増えたはずです。

 東アジア杯直前のリーグ戦は7月29日、水曜日開催だった。ペトロビッチ監督が言うとおり、週1試合ペースを守る開催方式であれば、同25日のリーグ戦終了直後から代表は準備期間に入れた。まさに「あと3、4日準備期間がほしい」というハリルホジッチ監督の要望どおりの形にできたのだ。

 ペトロビッチ監督 日本のサッカー界にとって、やはり一番いい宣伝方法は、代表がいい結果を残すことだと思います。それは必ずJリーグにも還元される。ですから代表チームには、必要ならばしっかりと時間をとってもらっていい。一方で我々のリーグ戦は、しっかりと間隔をあけてするべき。であれば、どちらかが妥協するしかない。いまの状況は、どちらも得をしない形だ。

 代表組を多く抱える浦和にとって、代表の活動期間にリーグ戦を開催することは、他のクラブよりも不利益をこうむる可能性が高い。それでも日本サッカーの将来を思い、不利を承知で「妥協」する案を、ペトロビッチ監督は示してみせた。【塩畑大輔】