国学院久我山(東京A)が前回準優勝の前橋育英(群馬)に1-0で競り勝ち、7度目の出場で初めて4強入りした。練習時間は平日2時間、対戦相手の分析はしないなど独自のスタイルを貫き、東京勢では17大会ぶりのベスト4進出だ。

 4強の扉を開いた。後半12分、FW渋谷のパスを受けたFW内桶がドリブルでペナルティーエリアに進入し、右足を振り抜いた。ゴール右上に突き刺さり「人生最高のゴール。鳥肌が止まらなかった」と興奮が止まらなかった。終盤は猛攻に耐え、7年前の準々決勝で4強を阻まれた相手に競り勝った。就任1年目の清水監督は「感無量。技術も、したたかさもあった」と選手をたたえた。

 文武両道の国学院久我山では朝の練習は禁止されている。平日の練習時間は2時間。史上最多209人の部員は野球部と半分ずつ1面の人工芝の練習場を使っている。狭い場所で素早くパスをつなぐスタイルを培ってきた。主将のMF宮原は「狭いからこそ、つないでかわす技術が身に付いた」と胸を張る。

 ほかの強豪のように大会前にビデオで対戦相手を分析することはない。合宿中も、大会期間中も清水監督主導のミーティングはない。決められているのは食事時間だけ。異色のスタイルに、宮原は「ここで優勝すれば、高校サッカーの概念を覆せるとよく話しています」と言う。

 技術は高いが、精神力に物足りなさがあった。夏の高校総体では明徳義塾に初戦で逆転負け。その直後の5日間合宿では1日に2試合の練習試合を組んだ。試合の間には初めて筋力トレーニングを行い、坂道ダッシュも取り入れて粘り強さの強化を図った。宮原は「以前は逆転されていたような局面で粘れたのは合宿のおかげ。1点差を勝ちきることができてきた」。心技がかみ合い変化を遂げた。

 出場した3年生7人全員が大学に進学する。宮原は学習院大に進学し、高校教師としてサッカーを指導するのが夢。決勝弾の内桶は慶大法学部を受験予定で「優勝しないと気持ちよく受験できない」と笑った。歴史をどこまで塗り替えられるか。埼玉スタジアムで新たな挑戦が始まる。【岩田千代巳】

 ◆東京勢の4強 国学院久我山が初の4強進出。東京勢の4強入りは準優勝した98年度の帝京以来17大会ぶりで、首都圏開催となった76年度以降では13度目。東京勢の優勝は91年度の帝京が最後で、首都圏開催以前を含め通算6度。いずれも帝京が達成している。その帝京以外で4強進出は、88年度の暁星(4強)以来27大会ぶり。