1993年のJリーグ開幕以来初となる降格の危機にひんする名古屋。残り8試合での“事実上の解任劇”は、小倉GM兼監督の力不足という問題だけでなく、クラブ全体としての見通しの甘さを露呈した。

 「5人目まで連動するサッカー」を唱える新米監督の抽象的なビジョンに選手は当初から戸惑っていた。キャンプから戦術が固まらず、シーズンが始まると長身FW頼みの単調な攻めに終始した。守備面でも当初の4バックから5バックへ場当たり的に変更するなど迷走し、選手との信頼関係は崩れていった。就任時に指導者として経験がなかったことを不安視する見方があったが、それが現実となった。

 フロントの動きも後手に回った。残留を争う甲府戦に敗れた7月23日、久米社長は「絶対に代えない。最後まで全面的にサポートしていく」と断言。解任を迫るサポーターに対して説明会まで開き、理解を求めた。だが、甲府戦後も1分け3敗。15位甲府との勝ち点は「7」にまで広がり、ようやく重い腰を上げた。

 迷走が続くチームは昨季限りで退団したDF闘莉王を再加入させることも急きょ決めた。久米社長は「ここが最後のタイミング。何とか勝ち抜いて残留したい」と切実な思いを口にしたが、取り巻く状況は厳しい。