今季のデータを独自の視点で分析して各賞を選出する、恒例「ニッカン・フットボール・アウォーズ」を今日から3回にわたって連載します。第1回はJ1攻撃編。浦和FW興梠慎三(30)が、「残り30分間の得点王」に輝いた。試合時間帯別に個人の得点数とシュート決定率(得点÷シュート)を集計したところ、浦和のエースの試合終盤における勝負強さが際立った。

 今季の興梠は30試合に出場し、自身シーズン最多の14ゴール(6位タイ)をマークした。そのうち半分の7得点が、試合終盤の残り30分に集中。その時間帯に限定した得点ランキングで首位タイとなり、7ゴールに要したシュート数はわずか12本。シュート決定率は時間帯別最高となる5割8分3厘を記録した。浦和のエースには、試合終盤のワンチャンスを確実にものにする決定力があった。

 試合が進むにつれて、決定率を高めていった。試合開始からの30分間は20位タイに相当する2得点だけで、決定率は8分7厘。ハーフタイムを挟んだ前半31分~後半15分の30分間は10位タイの5得点に増え、決定率も2割5分にアップ。そして、お互いに疲れの見える残り30分に集中力をさらに高め、少ない好機を確実に仕留め続けた。

 抜群の勝負強さを示した興梠の得点試合は11戦全勝(1試合2得点が3試合)。年間の得点試合が11試合以上あった上でチームが全勝(90分試合)は、J1史上初のケースとなった。

 ただ、そのリーグ戦での「不敗神話」も、3日の鹿島とのチャンピオンシップ決勝第2戦で途切れた。前半7分に先制点を挙げたものの、逆転を許して1-2で敗戦。年間王者の座を逃した。後半26分、前半に腰を痛めた影響か、途中交代。試合終盤の勝負強さを発揮できないまま、今季の戦いは幕を閉じた。【石川秀和】