五輪の流行語は数多い。水泳の岩崎恭子の「今まで生きてきた中で、一番幸せです」。北島康介の「超気持ちいい」「何も言えねえ」。モーグル上村愛子の「なんでこんなに１段１段なんだろう」などがある。これはすべて、テレビのインタビューで、現場の新聞記者は聞けていない。

　五輪の取材は、高い放送権料を払うテレビ局が優先される。まず各局のテレビがインタビューを行い、その後に新聞など、ペン記者の番が回ってくる。テレビ媒体の影響力はもちろん、競技を終えた直後で興奮が冷めやらない状態だからこそ、名言が生まれやすいのかもしれない。

　選手たちがペン記者のインタビューゾーンにたどり着くまで、時には３０分、１時間近く経過するケースも少なくない。選手のアドレナリンは下がり、キャッチな言葉は減るかもしれないが、そこでテレビインタビューと違った本音を聞けることがある。

　０４年アテネ五輪で「超気持ちいい」と言った北島だが、実はペン記者の前では顔を押さえて嗚咽（おえつ）を漏らしている。今回の男子５００メートルでメダルを逃した長島は号泣して通り過ぎた後、再び戻ると「（応援に来た方の）旅費全部払いたいです」と、独特な表現で悔しさを表現した。流行語とは、また違ったドラマをソチから伝えていきたい。【田口潤】