[ 2014年2月25日12時36分

 紙面から ]閉会式に参加し仲良く笑顔を見せるフィギュアスケートの、右から村上、浅田、鈴木、高橋(AP)

 17日間の熱き戦いに終わりを告げ、ソチ五輪日本選手団が24日、日本へ向けて出発した。前日23日には閉会式が行われ、119人が参加。ロシアの重厚な文化、芸術に彩られた式典では、フィギュアスケート女子の浅田真央(23=中京大)がフリーで使用するラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」がピアニスト62人によって演奏された。

 選手の入場行進が終わり、暗くなった場内の真ん中から1人のピアニストが登場する。ロシアで著名なピアニストのマツーエさんが鍵盤に手を添えて奏でだしたのは、あの旋律。ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」。自ら「人生の中で最高な演技ができた」と振り返る浅田のフリー曲。舞台袖から次々に登場するピアノとピアニストの数は62人にふくれあがり、大演奏会はまるで、浅田へのプレゼントのように会場に力強い音を響かせた。

 「すごく助けられた部分があった」という名曲。フリーでは自己ベストを塗り替え、国内外で多くの感動を呼んだ。きっとその演技を思い出していただろう。ただ、サプライズはそれだけではなかった。バンクーバー五輪のショートプログラム(SP)で演じたハチャトリアン作曲の「仮面舞踏会」もスタジアムに響いた。前日、バンクーバーとソチの「2つ合わせて私の中の最高の五輪だったなと言う気持ちがしています」と話していた。その言葉に呼応するような選曲も、どこか運命的だった。

 入場行進では男子の高橋、町田、女子の鈴木、村上らと日の丸の小旗を振って笑顔で行進し、記念撮影に納まった。スタンドから式典を見守る中では、小さくあくびをするところを、日本国内向けの映像配信をしていたNHKに放送される場面も。伝え聞くと「え~~~」と跳び上がって驚いたが、心身ともに疲労困憊(こんぱい)なはず。

 「世界中が1つになったと思った」。そう楽しめた閉会式、2度目の五輪。金メダルに挑んだ銀盤での戦いでは6位に終わったが、この日は演出用に配られたメダル形の電飾を首から下げた。4年に1度の夢舞台。「終わってしまって寂しい気持ちがある」とも話した。

 その去就に注目が集まるが、まずは目の前の試合に集中。次は世界選手権(3月26日開幕、さいたまスーパーアリーナ)が待つ。この日チャーター便で日本へ出発する際は、関係者に丁寧に頭を下げ機上の人となった。今日25日に成田に到着するが、その足で外国特派員協会での会見に臨む。

 得たもの、感じたものを、今度は日本で応援してくれた人々に伝えていく。【阿部健吾】