すごいとしか言いようがないです。英樹の底力というか、重圧に打ち勝つ精神力は。特に今日(最終日)は難しいラインにつくことが多かったですし、今週は全体的にパットが入っていなかったので、勝つ時のいい流れには少し足りないんじゃないかという感覚がありました。

 ただ、ショットは良かったですし、ボギーを打たない限りチャンスは来ると思っていました。第3ラウンド16番の30センチにつけたベタピンショット、最終日3番のロングホールで60センチに2オン…。ショット・オブ・ザ・ウイークにも選ばれましたし、鳥肌が立つようなショットを連発していました。飛距離もすごかった。レギュレーション(正規)の18番(442ヤード)は、第2打の残りが73ヤードしかありませんでした。試合後にスタッツを確認して分かったことですが、最終日の18番は75選手の中で一番飛んでいたんです。

 しびれるようなプレーオフでしたが、英樹はずっと落ち着いていました。余裕を感じるというか、そばにいて本当に頼もしかった。そして、このコースとどれだけ相性がいいんだと(笑い)。米ツアー仲間のみんなにも言われます。うれしかったのは、リッキー(ファウラー)とプレーオフを戦った昨年は99%アウェーでしたが、今年は英樹の応援も多かったこと。60万人を動員することで有名な大会ですが、その中でも「ヒデキ」の名前を呼んでくれる声がしっかり聞こえていました。米ツアーでの人気の高まり、何より、この地で英樹が認められてきた証しでしょう。タイガー(ウッズ)にとってのトーリーパインズのように、英樹の代名詞ともいえるコースになってほしいと思います。

 個人的には先週のファーマーズ・インシュアランス・オープンで外からプレーを見させてもらったのが大きかったです。ずっとロープの中にいると、客観的に見ることができなくなったり、物事を違う角度から考えることができなくなってしまうことがありますから。僕の代役を務めてくれた早藤(将太)君を見て初心に戻ることもできましたし(石川遼のキャディーである佐藤)賢和君の仕事を見て勉強もさせてもらいました。

 この優勝はマスターズに向けて、すごく大きいと思います。連覇が自信になることはもちろんですが、英樹は今年も“来てる”と思わせることができる。ツアーの中で存在感を出すことができれば、いい意味で他の選手にプレッシャーを与えられます。

 最後に、現地で声援を送っていただいた皆さん、日本で応援していただいた皆さんに感謝を申し上げます。まず、最初の目標はクリアできましたが、これにおごることなく、日々精進していきます。(2017年2月7日付紙面転載)