目は口ほどに物を言うというけれど、あんだけ能弁なまなざしは、ちょっと見たことがなかった。4月19日、KKT杯バンテリンレディース最終日。47位で終わったアマチュアの勝みなみちゃん(16)に、定番の質問を放り込んでみた。「当たり前かもしれんけど、やっぱりプレッシャーはありました?」-。

 帽子のつばの下で、両目がギラッと光った(ように見えた)。テニスや卓球のライジングショットみたいにスパッと素早く、きっぱり返された。

 「当然、ありました」。

 迫力あったわ。「…そ、そらそうやね」と、かみながら相づち打ったもんなあ。前年大会で「15歳293日」のツアー最年少優勝記録を樹立。そっからの1年が、どれほどのものやったか。16歳の少女が、ディフェンディングチャンピオンとして臨む大会に何を感じていたか。その一言でわかった気がした。

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 大会前のみなみちゃんは、明るく見えた。予選通過を大前提の目標にしつつも、1年前の優勝スコア=通算11アンダーを引き合いに出して「何とか上回りたいですね」と話しとった。でも、思えばアレは私らマスコミ向けのリップサービスやったんかなあ。なんか申し訳ないわ。

 大会期間中、泊まったホテルがたまたま同じで、第1日の朝ご飯のバイキング会場で顔を合わせた。母久美さん、祖父龍作さんとテーブル囲んでたけど、みなみちゃんはスエットジャケットのフードを頭にすっぽり被ってた。まるで周囲を遮断してるみたいやった。「おはようさんです」と声かけて悪かったなあ。

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 重圧がいかほどやったか。第2日のラウンド中、コースで久美さんに歩きながら、話を聞いた。第1日は76で62位。ノーバーディーやったし「うまいこといきませんな」てな感じで話し掛けたのに「いやあ、私はよく80たたかなかったなと、ホッとしました」。何でも、練習日から「こんなに力んで調子の悪いみなみを、初めて見た」と思ってたらしい。

 どこに行っても「史上最年少優勝の勝みなみ」として顔がさす。龍作さんが「外に出る時は、いつもマスクしとるんよ」とこぼしてた。その注目度から来るストレス、重圧が1年間でたまりにたまって、ディフェンディング・トーナメントでピークに達したんやろうね。実際、みなみちゃんも言うとった。

 「会う人がみんな『チャンピオンなんだから、頑張れ』と言う。応援してくれてる分かってても、その声が1つ1つ積み重なっていって…。ジュニアの試合じゃ、そんなこと言われない。自然体でできますから」

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 宮里藍ですら、アマチュア優勝時は「18歳101日」。東北高3年の秋やった。みなみちゃんは、鹿児島高に入学したばかりの1年生。つまり彼女ほど、16歳を異常な環境で過ごしたゴルファーは過去におらんかったわけです。あの優勝後、ツアー出場9戦でトップ10は1度もない。ただし、予選落ちが2回だけっちゅうのは、やっぱり彼女がただ者やないことの証明やと思う。

 大変な1年は終わった。これからはノビノビ力を発揮してほしい。もちろん、できる限りやけどね。【加藤裕一】