7月12日が最終日だった男子ツアーのミュゼプラチナム・オープン(兵庫・ジャパンメモリアルGC)に、前阪神タイガース監督でアマチュアの真弓明信氏(62=日刊スポーツ評論家)が出場した。北海道シニア・オープンなどシニアの試合やレギュラーでもローカルの2日間大会などに出場経験はあるが、正真正銘のレギュラーツアーに出場するのは、初めてのことだった。

 球界でも屈指のゴルフ上手は間違いないところだ。兵庫・三木GCのハンディ2。こんなローハンディの数字よりも、なによりうまさを物語るのは、13年、関西の予選を通り、関西シニアで上位に入り日本シニアの出場権を得て、3日間を戦い13位に入った実績である。アマチュアの最高峰の戦いは日本アマだが、55歳以上の最高峰は日本シニアなのである。ここに、当時60歳の真弓氏が出ること自体が並大抵なことではないのだ。

 まして、プロ野球の監督までした人がである。球界に何人も上手な人はいるが、こんな“日本”と名の付く大会にまで出た真弓氏を、私はNO・1の腕前だと思うのである。

 ものすごく注目されて、第1日の第1打を打った。ドライバーでややヒール気味ながらフェアウエーのど真ん中に打っていった。「さすがの度胸やな。甲子園で5万大観衆の中でいつもやってきた人やから」と勝手に想像して感心していた。しかし、当の真弓氏は「足はガクガクするくらい震えていたよ。でも、あの味わえない緊張感がたまらないんだよ」と振り返っていた。

 ともあれ、第1日は、ペナルティーもなく素のトリプルボギーを打ったりして、85。第2日は、7番パー4で唯一のバーディーを奪うなどしたが、池に2回入れて第1日より3つよくなったが82。目標の70台は出ず、トータル25オーバー167の最下位で真弓氏のレギュラーツアー初挑戦の2日間は終わった。

 「いろいろ経験できて楽しかったよ。深いラフや難しいピン位置など、アマチュアの試合にないことばかりだった。また? 呼んでもらえれば出たいな」。まったくめげていないこんな姿には感服するものがあった。

 話題を振りまいた真弓氏と、プロアマ大会で同じ組だったのが武藤俊憲プロだった。武藤プロに「真弓さんはどれくらいで回れるかな?」と質問してみると「確かにうまいのですが、75なら大合格点じゃないですか」と答えてくれた。このコースはパー71だったので、4オーバーだ。しかし、これも外交辞令が入っていて「70台が出せれば」と胸の内では思っていたらしい。

 それはともかく「どんな形でも、男子ツアーが注目されるのはいいことです。真弓さんには感謝したい」と武藤プロは頭を下げた。

そして、その裏にはもうひとつの考えもあった。「アマチュアでうまいとみんなが思っている人が、レギュラーツアーのセッティングでやって、大たたきする現実。その同じコースでプロは平気で65くらいのアンダーパーを出す。この彼我(ひが)の差をみることによって、男子プロのすごさが分かってもらえれば、ありがたいことなのです」。

 私も長くツアーを見てきて、男子プロのすごさは重々わかっているつもりではいる。真弓氏とも幾度とゴルフをしてそのうまさもわかっている。しかし、同じ土俵に立ったときに、武藤プロが言う彼我の差を見た。今回のミュゼプラチナムオープンを取材して、私は改めて男子プロのすごさを思い知らされた気がする。【町野直人】