ゴルフ用品売り場を見ると、ボールはメーカー別に並べられていることが多い。A社のコーナーには性能や価格帯、その社(または店)のお勧め度合いなどによって、数種類のボールが順序づけられて並べられる。隣にはB社、その隣はC社の棚という具合だ。クラブとのマッチングもあるから、メーカーを決めて選ぶ人もいるだろう。好きなプロの契約メーカーという理由で選ぶ人もいるかもしれない。

 そんな中、珍しいディスプレーをしている店があるというので見に行った。

 キャロウェイ「クロム ソフト」「レガシー ブラック」、ダンロップ「ゼクシオUX-AERO」、テーラーメイド「グローレ DS」、タイトリスト「プレステージ」の4社5種のボールが同じ棚に並んでいる。棚の最上段には「今年大注目の『第3カテゴリーボール』」の文字。続いて「ディスタンス&スピン」「飛距離性能とスピン性能のベストバランス」とある。つまり同じタイプ、同じコンセプトを持つ各メーカーの製品を集めた棚だった。これに4月14日新発売のブリヂストン「ツアーB V10」が加わる。

 「第3カテゴリーボール」とは?

 ボールには飛距離を追求したタイプと、スピン性能に優れたタイプがある。この両立というか、いいとこ取りのボールが「第3」なのだという。従来も「飛んで、止まる」を売りにした商品はあった。量販店「GOLF5」世田谷店の丸山和広店長代務(38)によると、それは飛距離8対スピン2、またはスピン7対飛距離3といったイメージだったのに対し、「飛距離7、スピン5です」。技術の進化を強調した。

 ただ、「第3の○○」などと言われると、つい「第3のビール」を連想してしまい、本物“風味”で割安な商品と勘違いしそうだ。実際は「第3のボール」は高品質で、平均的なボールよりお高めである。

 商品ディスプレーの話に戻る。この“第3のボール特集”の仕掛け人はダンロップスポーツだった。もちろん「ゼクシオUX-AERO」のPRもある。それよりも、他社製品も巻き込んで「第3のボール」の認知度を高めるキャンペーンの意味合いが強いという。ゴルフ用品業界も厳しい時期が続いた中、ライバル社といえども共存共栄、「第3のボール」に火が付けばお互いに元気になれるという構図だ。

 3月下旬から「GOLF5」全店でこのディスプレーは展開されている。ヒントはドラッグストア。シャンプー、洗顔料、ボディーソープ…メーカー別ではなく用途別に陳列され、客は似たような効用ならどれが自分の好みか、お得感があるか、微妙な差は何か、他社製品と見比べて購入する。考えてみれば、ごく自然のことだった。

 最後に丸山店長代務の“名言”をご紹介しよう。「初心者の方や腕に自信のない方こそ、いいボールを使った方がいいんです」。

 例えば「まだ下手だから」「OBや池で球をなくすから」と安価なロストボールを使うと逆効果。スイングがおぼつかない上、劣化したボールでは思い通りに飛んでくれるはずがない。高品質で高価なボールは上級者用…と思い込まない方がいいらしい。パワーの衰えをカバーしたいシニアや、女性にもお勧めだと、すっかりその気にさせられてしまった。【岡田美奈】