帽子のつばを下ろし、顔を隠す。18番グリーン上でひざまずいたアン・シネ(27=韓国)は、泣いているようだった。

 12日に福岡カンツリー倶楽部(CC)和白コースで開催されたほけんの窓口レディースの第2ラウンド。

 通算2オーバーで、残すは最後の1ホールだけだった。このまましのげば、今季初の予選通過となる。ほんの少しだけ油断があったのだろうか。

 18番パー5。ピッチングウエッジで放った3打目は、グリーンを超えた。4打目は左ラフからショートし、5打目はカップオーバー。6打目のボギーパットは入らず、痛恨のダブルボギー。同4オーバーとなり、わずか1打及ばず予選突破が消えた。

 「頭が真っ白です。泣かないように我慢していました。すごくストレスがたまった」

 これまではホールアウト後に取材を受ける際、一度、ロッカー室に戻ってお化粧直しをすることが多かった。だが、この日はそんな余裕もなかった。

 「セクシー・クイーン」と騒がれながら、日本ツアー参戦1年目の昨季は14試合で予選落ち4度、棄権1度。ベスト10入りは1度もなく、最高順位は9月のミヤギテレビ杯・ダンロップ女子オープンの12位。QTも71位に沈んだ。今季も、これで2戦連続の予選落ちだった。

 話題だけが先行し、結果が出ない現実-。

 もちろん“美の追究”は見ている者の目を引くが、プロスポーツ選手である以上は、結果がそれを上回るのは言うまでもない。

 だが、彼女は必死になりつつある。それを垣間見たのは、こんがりと焼けた肌だった。プレー中に日焼け止めを塗りたくり、日差しを避けるために傘を差していたが、そんなことも忘れていた。ウエアの肩をペロンとめくり、報道陣に白い肌を見せると、こう言った。

 「すごく焼けちゃいました。ちょっと日差しが強すぎた。でも、私はゴルフ選手。焼けることは気にしない」

 そう言い残して取材を終えると、クラブハウスの片隅にあったベンチに座り、深いため息をついた。両手で顔を覆い、しばらくするとサングラスをかけた。よほど、悔しかったのだろう。誰にも悟られないように、彼女は1人、泣いていた。

 「ことごとく予選が通過できない。自信をなくしてしまっています。まずは予選を突破して、自信を取り戻したい」

 成績が伴わない今は、批判的な声もあるだろう。だが、ギャラリーからの人気はすさまじく、今大会も100人以上がサインを求めて列をつくり、丁寧に応じる姿があった。

 次週の中京テレビ・ブリヂストンオープンにも出場する予定。

 美しく、強い-。そんなアン・シネを見たいと思うのは、私だけではないだろう。【益子浩一】