9月のミヤギテレビ杯ダンロップ女子(宮城)。今季初めて顔を合わせたイ・ボミ(30=韓国)は、以前より細くなった印象を受けた。「お久しぶりです~。何してたんですか?」。男子ツアーの取材が中心で、女子ツアーは年に数試合しか現場を訪れる機会のない記者でも、しっかりと顔を覚えていて、丁寧に対応してくれるサービス精神は変わらない。

その日はプロアマ戦だった。「賞金女王の自信を持って!」。同伴競技者の“激励”に笑顔でうなずいていた。同じような言葉を、今年だけで何十回とかけられてきただろう。何げない一言の積み重ねも、重圧になっているのではと感じた。

ここまで19試合に出場し、賞金ランク90位。賞金女王に輝いた15、16年はそれぞれ23、21度のトップ10入りを記録。不調と言われた昨季も7度あったトップ10入りがない。8試合を数える予選落ちも昨年の4から倍増している。特にパーオン率の落ち込みが激しい。韓国ツアー時代から一貫してショットメーカーで鳴らし、15年は74・5880%、16年は74・4694%と部門別1位に君臨。昨季は68・1992%で23位と下げ、今季は61・9213%で84位に沈んでいる。

直近の日本女子オープン(千葉)。スタート前のドライビングレンジでは、1カ月前からタッグを復活させたコーチのチョ・ボムス氏が1球1球チェックしていた。そばで見つめる李彩瑛マネジャーも「必死です」。ラウンドに備えた調整の域を超える熱の入りようだった。2試合ぶりに予選を通過した。

51位フィニッシュにも明るい兆しがある。「ドライバーで、右が怖くなくなったんです」。ドローボールが右に出たまま戻ってこないミスに悩まされてきた。ここ2試合限定でバッグを担いでもらった大溝雅教キャディーの疑問がきっかけだった。「いつから上げて打ってるの?」。自分でも意識していなかったというが、確かにアドレス時にクラブヘッドを浮かせていた。コーチとも話し合い、日本女子オープンから地面にクラブをつけた状態で始動するようにした。

「それだけで安定感が出てきました。バックスイングで低く長く、真っすぐ引けるようになって、ダウンブローで打ち込めるようになった。手で打ってしまうのが多かったけど、遠心力を使って、ボールが押せるようになったから、今は体重移動にだけ気を付けています」

意識するポイントが明確になり、ラウンドしていても常にスイングのことが頭の中を占めるようなことはなくなったという。賞金女王だった頃も、アドレス時にヘッドは地面についていたのか。「分からないです」と言って続けた。

「良かった時とは比べられないです。あの時は全部が良かったから。体もメンタルも、全部。あの時と今を比べる方が、おかしいと思います。今の状況で少しずつうまくなるように、1つでもミスをしないようにやっていくだけです。それ(アドレスでヘッドを地面につける)だけでミスが少なくなったから、まずは良かったかなと思います」

2、3年前の自分と比べることはしない。今を受け入れ、長い道のりを覚悟しながら、しっかりと前を向いて進もうとしている。

【亀山泰宏】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)