「規格外」とか「怪物」とか。いかにもスポーツ新聞っぽくて、好きな言葉や。よう使う。しかし、ちょっと“盛り気味”な時もある。まあ、そこはそれで…あきまへんか?

 さて、正真正銘の「規格外」の話をしましょう。先日のミズノクラシックで頑張ったローラ・デービースです。

 欧州ツアー45勝、米ツアー20勝、日本ツアー7勝。来年7月にゴルフ世界殿堂入りする51歳とくれば、レジェンド感満載やが、思いっきり現役やからね。キャリーで正味250ヤードほど飛ばすんやから。

 身長177センチ、体重○×キロ(は欧米女性に聞くのはタブーやけど、そこはイメージを伝えるために「推定100キロ超」と書いたら、女性マネジャーに「何これ? ひど~い」と、ものすごく嫌な顔をされた)ちゅうサイズからして、けた違いや。さらにドライバー以外は全部アイアンっちゅうアホみたい? なクラブセッティングとか。

 でも、もっとすごいことがある。“日本的思考の規格外”というか。

 彼女、練習をせんのですわ。

 ここからは、女性マネジャーとの会話。デービース本人やないけど、バイリンガルの日本人で、実にざっくばらん。デービースの本質は外してへんはずです。

 ほんまに練習せんの?

 「しないよ。トーナメントを離れたら特にね。多分、嫌いなんだと思う。ストレッチとかもしないし」

 体は大丈夫なん?

 「そりゃあ痛めてる場所はあるだろうけど、逆に練習しないから長持ちするんじゃないかな。疲れなくて。よくクラブハウスからドライビングレンジ(打撃練習場)が離れてたりするじゃん? そんな時はレンジにも行かないからね。『途中に階段があるでしょ。転んだら、ケガするわ』とか言ってね」

 笑い話みたいな本当の話もあるらしい。昔、日本での優勝インタビューで、ドライバーのシャフトについて質問を受けた。質問者は多分めっちゃ硬いやつを使ってると思い、返事を期待したんやろうが、デービースは困ったように一言。

 「ピンク」

 硬度とか、長さとか知らんで、仕方なく色を答えたそうです。

 再び女性マネジャー。

 「シャフトがどうとか、どうでもいい。きっとどんなクラブでも“使えちゃう”のよ。ウエッジ3本のシャフトが、種類も硬さもバラバラだったときはさすがに驚いて『あなた、流れってものがあるでしょ?』と言ったの。そしたら『そういうものか』と納得したようで、クラフトマンにそろえてもらって『OH! グレート!』だって。笑っちゃうでしょ?」

 練習しなくても、できちゃう。どんなクラブでも、打てちゃう。

 「でもね、彼女、勝負事はすごく好きよ」

 英国人らしく、サッカー、クリケットをこよなく愛し、子どもの頃からプレーしてたとか。様々なスポーツの実戦で、体力とセンスを培ってきたんでしょう。

 …さて、ほんまに練習せんのか? 第2日は50球、最終日は66球。スタート前に打ちました。いずれも60度のウエッジから打ち始めて、アップ代わりに10分少々。まあレンジはクラブハウスのすぐ横やし、さすがに優勝争いしてたし、さすがにするか。

 でも、ウォームアップの仕草はなし。素振りはゼロ。1回もせんかった。【加藤裕一】