【メルボルン(オーストラリア)=塩畑大輔】石川遼(20=パナソニック)が、人生の目標に掲げる20歳でのマスターズ優勝へ「心」と「技」のヒントを得た。世界選抜として出場したプレジデンツ杯を終え、帰国の途に。3日間ペアを組んだアーニー・エルス(42)との対話や世界的強豪との対戦から、さまざまな着想を得た充実の4日間を振り返った。

 出発前のメルボルン空港ロビー。石川は充実した表情で話し始めた。

 石川

 調子は良くなかったけど、最後はバッバ・ワトソンにも勝てた。やはり大事なのは気持ちです。

 最終日、米国は12カード中4勝すれば優勝だった。若く、実績で劣る石川に、実力者を当て確実にポイントを取るのは常とう手段。

 石川

 それは何となく分かる(苦笑)。でも世界選抜の12人に入った以上、やるしかない。それがパットの思い切りにもつながった。勝ったらアダム・スコットが「君は僕のヒーローだ!」って駆け寄った。バッバは会見で僕について「簡単に勝てる」と言っていたみたい。それにアダムは怒っていたんですね。

 パットの好調さはワトソンのキャディーが「リョウは決めすぎ」と愚痴ったほどだった。

 石川

 だから気持ちでメジャーの戦いも変わるはず。今までは予選落ちしないようにと戦ってきた。そうじゃなく、最初から上位争いのメンバーに選ばれているというような気構えなら、いいプレーができるのかも。マスターズを前にこの経験ができてよかった。

 精神面の助言もあった。最終日の夜。石川はエルスと2人きりで話をした。

 石川

 食事の後、エルスに「談話室に行こう」と誘われたんです。それでいろいろ話をしたんですが、特に「会場ではプロに徹する。でもプライベートは守った方がいい」ということを熱心に話してくれました。

 メルボルンでも石川と一般女性の交際、その取材の過熱ぶりは知られていた。

 石川

 エルスは自分の経験から、僕のことを心配してくれていた。彼は14歳で世界ジュニアに優勝し、母国でゲーリー・プレーヤーの再来と騒がれた。その分プライベートを侵害されることが多かったそうです。君は気をつけた方がいいと。親身な言葉だったので、ホントにじんときました。

 技術面のヒントも得た。ワトソンとの対戦では、世界レベルの技術とスイング精度を目撃した。

 石川

 風やグリーンの硬さ、傾斜に合わせ、1打1打違う球筋で攻める。そのために練習から、高さと左右の曲がりを丁寧に打ち分けている。スイングについても、体の隅々の動きを把握できている感じ。

 マスターズ優勝には、その域の技術が必要だ。

 石川

 でも「マスターズまでに何をしなくちゃ」とは思わない。自分の体の隅々に意識を行き渡らせて、毎日1球1球を丁寧に打つ。そうすれば今回見たワトソンたちトップ選手のように、体の隅々まで動きを把握できるようになる。そういう感じで、マスターズまで練習を重ねていきたい。