石川遼(20=パナソニック)が「変幻自在」の技で、婚約表明後初Vを狙う。男子ゴルフの国内開幕戦、東建ホームメイト杯は明日12日、三重・東建多度CC名古屋で始まる。石川は10日、会場入りして小技を中心に練習した。予選落ちした先週のマスターズで、転がしのアプローチと、左右に曲げて寄せるショットの重要性を再認識。婚約した幼なじみの一般女性(20)へ、自身の技術を駆使して初の開幕戦Vを届ける。

 石川の表情は、いつも以上に引き締まっていた。婚約表明後、初めて迎える試合が今季国内開幕戦。「帰りの飛行機の中でも(今週の)18ホールのことを考えていた。モチベーションはすごく高い」。予選落ちしたマスターズから8日に帰国したばかりの20歳の頭の中は、早くも戦闘モードに切り替わっていた。

 昨季は未勝利に終わったが、今季は「賞金ランクより勝利数にこだわりたい」という。勝ち星量産へ、新たな取り組みも始めた。これまで、グリーン周りではサンドウエッジで「球を止める」ことが多かったが、今後はアプローチウエッジを積極的に使って「球を転がす」戦略をとる。「寄る確率が高いし、技の引き出しも増える」と石川。前日9日も3時間ほど、練習を繰り返した。

 さらに、ほぼストレートの球筋でコースを攻めていたショットも、あえて左右に曲げてフェアウエーやピンを狙う。マスターズを制したバッバ・ワトソン流の作戦だ。曲がり幅をうまく操作できれば、池やバンカーを避けて、ターゲットを攻めることができる。「球を曲げるリスクはあるけど、見ていておもしろい」。多種多様の技を披露して、ファンを盛り上げる。

 東日本大震災の被災地支援も継続する。昨季は賞金全額を寄付したが、今季は「布団や洋服を送ったり、被災地に行って子供たちに会いに行ったり、いろんな案を考えたい」と、賞金とは別の形で支援する考えだ。「風化しちゃうのが怖い。常に頭の中に入れておきたい」とうなずいた。

 国内開幕戦の今大会はプロデビューした08年が5位、昨年も3位に入っており、相性は悪くない。中学時代の同級生との婚約を明かした直後で注目も高まるが、周囲の視線を力に替えるタイプ。変幻自在の技も駆使して、頂点だけを狙っていく。【木村有三】