賞金ランクトップ4が不在の大会で、新星が現れた。アマチュア畑岡奈紗(なさ、16=茨城・翔洋学園高2年)が4バーディー、ノーボギーの68で回り、単独首位に立った。昨年8月の日本ジュニアで勝みなみ(鹿児島高)に最終日6打差から逆転優勝を許した悔しさを糧に、7月の世界ジュニアを制したトップアマ。ツアー初出場のアマチュアの首位発進は88年のツアー制度施行後初めてという快挙となった。1打差の2位には武尾咲希がつけた。

 畑岡は驚きを隠せなかった。「まさか、こんなに上に来られると思ってなかったのでビックリしてます」。第3組スタートから平均飛距離260ヤードのドライバーショットを武器に、首位でホールアウト。1度聞いたら忘れない名前は、最後までリーダーボードの一番上を独占した。3度目のマンデートーナメント挑戦で勝ち取った大舞台。「同級生の勝さんや新垣(比菜)さんに刺激をもらって、チャンスがあればプロの試合に出たいと思っていました」と待ち焦がれていた。

 勝からもらったのは「刺激」のひと言では片付けられない。昨年8月の日本ジュニア最終日、6打差を守れなかった。「カメラとかも多くて、頭が真っ白になりました」。コースで泣き、帰りの車中で泣き、家に入っても泣いていた。父仁一さん(50)は「あんなに泣いたのは見たことがない」と振り返る。その屈辱があったから、世界ジュニア優勝につながった。

 茨城・宍戸ヒルズCCで事務として働く母博美さん(45)の影響で11歳からゴルフを始め、中学3年からは中嶋常幸主催の「トミーアカデミー」で腕を磨いてきた。1カ月前から休みを申請し、6月の日本女子アマ以来2度目のキャディーを務めてくれた母は、娘の急成長に戸惑いすら感じたという。「飛距離が伸びたとは聞いてましたけど、狙って打つ場所が私の想像を超えていて…。途中からは先に私が『どこ狙うの?』って聞いてました」。ナショナルチーム入りを機に、めきめきと力をつけた。

 素顔は嵐の大野智とプロ野球巨人の坂本勇人ファンの高校生。「プロになって活躍して(テレビ番組の)『VS嵐』に出たい」と語る夢は初々しい。それでも第2日以降について聞かれると「ローアマを取りたいと思っていたけど、チャンスが来たら優勝争いがしたいと思いました」。屈託のない16歳が勝負師の本能をのぞかせた。【亀山泰宏】

 ◆畑岡奈紗(はたおか・なさ)1999年(平11)1月13日、茨城・笠間市生まれ。ゴルフは11歳から。岩間第2小時代は少年野球チームで二塁手、岩間中では陸上部に所属して200メートルが専門。15年世界ジュニア、関東高校選手権、国体優勝。目標は中嶋常幸と宮里藍。158センチ、62キロ。

 ◆アマチュアの首位発進 99年の雪印レディース東海クラシックの大山志保からこの日の畑岡を含めて12例あるが、ツアー初出場に限ると88年のツアー制度施行後、畑岡が初めてとなる。

 ◆畑岡と同世代の有望女子アマチュア 昨年4月のKKT杯バンテリンレディースを制した勝、アマチュア史上初の3週連続トップ10入りを果たした新垣比菜(興南高)が筆頭格。昨年日本女子オープンで3位に入った永井花奈(日出高)、勝と並ぶアマチュア日本タイトル2冠を達成している蛭田みな美(学法石川高)、5月の中京テレビ・ブリヂストンレディース10位の稲見萌寧(もね、日本ウェルネス高)、日本人史上最年少で全米女子オープン出場を果たした山口すず夏(鵜野森中)らもいる。