谷原秀人(36=国際スポーツ振興協会)が通算11アンダーの269で今季初勝利、ツアー通算11勝目を挙げた。2位に2打差の首位から出て、4バーディー、3ボギーの69で回り、逃げ切った。13年11月の三井住友VISA太平洋以降、約2年間勝利から見放され、今年は父直人さん(67)に胃がんが判明するなど、苦しい時期を乗り越えてつかんだ栄冠だった。これで賞金ランクも3位に浮上した。

 強い谷原が戻ってきた。雨で難度が高まる中、序盤から危なげない。パットの名手らしく、5番で2メートル、6番は3メートルのパーパットを沈めてスキを与えない。8番では「10回打って1発決まるかどうか。1メートルは切れる」という6メートルのスライスラインを読み切ってバーディー。続く9番も6メートルを沈め、2位と5打差と突き放し、勝負を決定づけた。

 普段はクールな男が「めちゃくちゃうれしいです」と、無邪気に笑った。最後の勝利以降、昨年の今大会も含め2位4回、3位3回と惜敗を重ねた。首や肩の故障にも悩まされた。今年は1月に米ツアーのソニー・オープンに出場したが、インフルエンザになって欠場。5月には父の胃がんが分かり、6月には愛車が盗難に遭う災難も。「自分たちが何か悪いのでは…」と、絢香夫人(34)とおはらいを受け「逆にとらえて、あとはいいことしか残っていないはず」と前を向いて、踏ん張ってきた。

 父直人さんはさまざまな治療を受け、自宅療養中。「7ホール、ゴルフした」と連絡もあった。同時に結果の出ない谷原に「こんなので終わっていいのか! 来年に向けて頑張れ!」と叱咤(しった)された。そんな父に勝つ姿を見せられたのが、何よりの喜びだった。

 賞金ランクは3位に浮上したが、1位の金庚泰(韓国)との差は約8550万円と開いている。だが「昔の片山(晋呉)さんみたいに」と、00年に終盤4戦3勝で逆転賞金王になった片山を引き合いに出し「そのくらいの気持ちで戦います」。2年前に勝った思い出の地で次戦を迎える。【岡田美奈】