野村敏京(23)が、また勝った。単独首位から5バーディー、6ボギーの73で回り、通算9アンダー279で逃げ切り、2月のISPSハンダ女子オーストラリア・オープンに続くツアー通算2勝目を挙げた。23歳4カ月での米2勝は日本人史上最年少、1シーズン複数優勝は12年宮里藍以来の快挙となった。日本勢トップの世界ランクも23位前後まで上昇する見込みで、8月のリオデジャネイロ五輪出場に大きく前進。堂々のメダル候補として名乗りを上げた。

 この強さは本物だ。最大20メートル近い強風が吹き荒れ、平均スコアは75・879と4日間で最も難しかった。それでも野村は崩れず、終わってみれば、4打差で圧勝した。12番で20メートルのスライスラインを完璧に沈めるミラクルバーディー。何度も拳を握り「『私、勝つなあ』と思った」。実は11番のボギーで2位に1打差まで迫られていたが「ふ~ん…。全然気付いてなかった。緊張もしてなかった」と貫禄たっぷりに笑った。

 キャディーのマクディード氏が「どんなときも気持ちがフラット。あの強さはすごい」と絶賛するメンタルに加え、パットなど小技の成長も著しい。初優勝から2カ月で早くも2勝目を挙げた23歳は、大きな可能性を秘めている。

 昨年6月の全米女子プロでコーチのかたわらキャディーを務めていたおじとラウンド中に衝突。翌日は弟がキャディーとなり、マクディード氏と専属契約を結んだのは今年から。無頓着だったクラブも、ようやくこだわりをのぞかせるようになってきた。同じ米ツアーで戦う宮里美香のトレーナーを務める工藤健正氏は「本人に合うかは分かりませんが」とした上で「まだまだ感覚でやっている選手。確かな理論に基づくトレーニングを積めば、もっとすごい選手になるかもしれません」とみている。

 「今年の目標はメジャーで勝つこと」と優先順位は変わっていないが、7月11日時点の世界ランク上位2人が選ばれるリオ五輪も大きく引き寄せた。今季米ツアーで複数優勝しているのは世界ランク1位のリディア・コ(ニュージーランド)と同8位の張ハナ(韓国)、そして野村だけ。「(金メダルの)可能性はあると思っています。自信はあります」と話していた通り“本命”に入ってきた。

<野村敏京(のむら・はるきょう)アラカルト>

 ◆生まれ 1992年(平4)11月25日、横浜市出身。日本人の父と韓国人の母を持ち、5歳まで日本で過ごした後、ソウル明知高校卒業まで韓国・ソウル在住。10年12月に日本国籍を選択した。166センチ。血液型A。

 ◆ゴルフ 祖母の影響で10歳から始める。日本国籍選択後に米ツアー最終予選で40位となりプロ転向。5月には中京テレビ・ブリヂストン・レディースで優勝。「18歳178日」は宮里藍の「18歳101日」に次ぐ当時2番目の年少記録。

 ◆米挑戦 11、12年と米ツアーで好結果を残せなかった。13年は日本ツアーに専念して賞金ランク29位に入ったが、シード権を放棄。再び最終予選から最高峰の舞台にはい上がった。

 ◆趣味 拠点をハワイに置いていることも影響しているのか「サーフィン」。

 ◆「男勝り」? 「敏京」の発音は韓国語で「ミンギョン」という女性の名前だが「使っている字は韓国で男の名前。お母さんのおなかにいるときから男みたいだったみたい」(野村)。米国での愛称は「ハル」。