鈴木愛(22=Salesforce)が、14年日本女子プロ選手権以来のツアー2勝目を飾った。首位から出て72で回り、通算9アンダー207で並んだ藤本麻子(25)上原美希(27)とのプレーオフに突入。1ホール目で藤本を、2ホール目で上原を退けた。初優勝から1年8カ月間に2位が5回、勝てそうで勝てない時期にピリオドを打った。同時に昨年大会は失格となっており、汚名返上の優勝でもあった。

 プレーオフ2ホール目の18番、残り120ヤードからピッチングウエッジで打った鈴木の球はグリーン左エッジではねて、傾斜を転がってカップ横15センチへ。「お先に」でバーディーを奪い、上原のバーディートライを見守った。「正直『お願いだから、もうこれ以上苦しめないでよ』と思いました」。上原のパットが外れ、優勝が決まると朗らかな“愛ちゃんスマイル”がはじけた。

 1打リードで迎えた正規の18番、第2打がグリーン左へ転がり池の縁の岩場と芝の間、ラテラルウオーターハザード内に止まった。「池に入ったかと思ったので、止まっていてくれてうれしかった」。同時に昨年の悪夢も思い出した。ラテラルウオーターハザードでの違反をきっかけに失格。「5~6秒考えました」。それを振り切って覚悟していたボギーに収め、プレーオフに持ち込んだ。

 プレーオフ直前には敬愛し、「お姉ちゃん」と呼ぶ大山志保の姿を見つけた。「苦しくて、涙が出て…。落ち着きたかったので」と大山にハグしてもらった。大山に「愛ちゃんなら大丈夫だよ」と言われて、再び戦闘モードに。1ホール目で上原がピン横1メートルにつけたのに対し「絶対に負けない」と5メートルのパットをねじ込み、勝負の2ホール目に向かった。勝てずに苦しんだ時期「嫌なことは全部話して、ストレスもお姉ちゃんにぶつけて」支えてもらった恩人が大山だった。

 初優勝時との違いを「あの時は頭真っ白でまぐれみたいなもの。今回は意識もしっかりあったし、笑顔ニコニコでプレーできたのが成長」と話す。その笑顔には実力者の風格さえ漂い始めた。【岡田美奈】

 ◆昨年の鈴木の失格 第1日に12番で第1打がラテラルウオーターハザード(赤杭内)にいき、第2打の前に付近の木の葉を取り除いてしまった。ハザード内でルースインペディメント(固定されてない自然物)を除くのは違反で2罰打。これを鈴木は1罰打としてスコア提出し、過少申告として失格に。ラテラルウオーターハザードはドロップ場所として、最後に横切った点から2クラブレングス(クラブ2本分の長さ)以内も認められる。